日本の勝ち組から世界の勝ち組へ、イオンのIT戦略
2003/7/8
7月3日〜4日に開催されたSAPジャパンのプライベートイベント「SAPPHIRE」で行われた講演の中でも盛況だったのが、R/3を実際に導入した顧客企業の事例だった。
流通大手のイオンでは、2010年時点での流通業界世界大手トップ10入りを目指し、ジャスコからの社名変更とともに新たな経営戦略を策定、弱点であるバックオフィス部門のITによる効率化を推進している。2002年度の同社の売上高は連結で3兆865億4000万円、経常利益は1274億円(単体では売上高1兆7012億円、経常利益200億円)である。
経営戦略に沿ったIT投資額は、グループ企業を含め、700億円規模を想定しているという。目指すべき目標は、売上高10兆円規模のスケール拡大に加え、コスト削減に的が絞られている。例えば、販売管理費という側面でみると、イオンは売り上げの28%を占めるが、米ウォルマートは16%、仏カルフールは17%であり、ワールドワイドで強力な競争力を持つには、まだ役不足である。常務執行役員
IT担当 縣厚伸氏は「ITは経営戦略に従わなければならない。つまり、仕事のやり方と組織を変えるために導入するのがITであって、その逆はありえない」と話す。
縣氏が掲げるIT導入におけるポイントは「トップダウンの意思決定」「業務プロセス改革を伴うこと」「適宜パッケージを導入することも検討する」の3点に絞られる。企業の経営戦略に沿って、組織を変革するには、トップダウンの一大号令は不可欠であり、その際には業務の既存プロセスは完全に洗い出されなければならない。そして、導入されるシステムは、ベストプラクティスを念頭に置き、ベンダに丸投げする状況は改善されねばならない。
このような考え方に沿った同社の新MDシステムは、マーチャンダイジング分野ではJDA Software Groupのアプリケーションソフト「ODBMS」「ARTHUR」「INTACTIX」を導入、POSはJDMAのPoS Designer、ロジスティクスには日立製作所のソリューション、会計システムはSAP、ミドルウェアにBEAのWebLogic、EAIにWeb Methodというようにバラエティに富んでいる。この新MDシステムが実現するのは、データの集中管理や在庫起点の商品補充といったビジネス上のニーズである。全国に販売店を持つイオンにとって、流通情報の中央一元管理を推進することは、「より安く、早く、しかも在庫を抱えない精度の高い管理」を実現する通過点にすぎない。
8月21日をターゲットに現在進めているのは、R/3で構築した統合会計システムと全国の各店舗のバックオフィスを接続し、なおかつ従来、紙で行っていた伝票起票などの処理をWebに移行させることだ。これまでは、会計システムが個社別に構築されていたため、財務管理情報をグループ全体で把握することは不可能だった。これを統合し、集中管理を行おうというわけだ。
縣氏は「世界のトップ10に入っていなければ、流通業界で生き残っていくのは難しい時代が来る。どこにでも勝る安さを実現するには、世界水準のコスト構造を作り出だすことが急務」であることを強調した。
(編集局 谷古宇浩司)
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