「SAPには負けていない」、日本シーベル社長が激白

2003/7/4

 CRMパッケージのトップベンダとして君臨してきたシーベル社。だが矢野経済研究所の調べによると、ライバルのSAP社が2002年国内CRMパッケージのトップシェアを獲得したという。一時は5割以上のシェアを握り、他社の追従を許さなかったシーベル社だが、この調査結果をどう見ているのか。さらに6月25日にSAPは「SAP CRM4.0」を投入したばかり。これがシーベル社にどのような影響を与えるのか。この問いに、日本シーベル 代表取締役社長 カルロス・チョウ(Carlos Chou)氏が答える。


――先日、矢野経済研究所が「国内のCRM市場はSAPジャパンがシーベルを抜いてトップに躍り出た」との調査結果を発表しましたが、これについてはどう見ていますか。

チョウ氏 各リサーチ機関の数値については注目している。中でも、今回の矢野経済研究所の調査結果はとても興味深い。この結果について、日本シーベルが明確にしたい点は3つある。

日本シーベル 代表取締役社長 カルロス・チョウ氏

 1点目は、SAP製品のライセンスの数え方に疑問が残ること。SAP製品ではERPパッケージR/3を導入すると、自動的にCRMのライセンスも付いてくる。ユーザー企業が本当にSAP CRMを評価して導入したのかは、分からない。まして、純粋なSAP CRMの導入ライセンスで数えているのか、それとも自動的に付与されたライセンスを含めた数なのかは不明だ。ただ1ついえることは、私自身はSAP CRMのユーザー企業に会ったためしがないという点だ。昨年、SAPはワールドワイドで「CRMパッケージを4社に導入した」と発表したが、私は「あれだけ売り上げを上げているのに、ワールドワイドでたった4社?」と耳を疑った。それ以来、SAPがCRMを導入したという話は聞いていない。またSAPが挙げているユーザー企業の名前にしても、本当にCRMが稼働しているのか、それとも単にR/3のユーザーなのかという疑問が残る。こうした点が解明されない以上、CRM市場のシェアが実際のところどうなっているかは分からない。

 当社の状況について説明すると、どんなユーザーに導入されたか、どのような点が評価されたかについて、四半期ごとにレポートを提出している。これはすなわち、「実際にシーベルのCRMパッケージを使っている」ユーザーがいるということだ。そこで2点目の意見だが、具体的なユーザー企業が見えないSAPと違い、当社は今後積極的にユーザー事例を紹介していくつもりだ。実質的な顧客ベースで見れば、どちらが勝ち組かおのずと理解されるだろう。

 そして3点目だが、シーベル製品が経営トップ層の中に確実に浸透していることを伝えておきたい。6月25日に発表したNTTコミュニケーションズへの導入事例で、代表取締役社長の鈴木正誠氏が率先し、シーベル導入に踏み切ったことを明らかにした。われわれは当初から「CRMは経営戦略の一環であり、成功の秘けつは経営層が中心になってプロジェクトを率いることだ」と述べてきた。「日本企業にはこうしたトップダウンの考え方は根付きにくい」といわれてきたが、多くの企業はこの方法でCRM導入を成功させている。日本企業も例外ではない。われわれは豊富な事例を通し、これを証明していきたいと考えている。

――ユーザーは、シーベル製品のどのような点を評価しているのでしょうか。

チョウ氏 その疑問に対する回答として、アバディーングループの調査結果がある。これはわれわれが提出した1400社の顧客リストに基づき、アバディーンのリサーチャーが実際にインタビューに出向いて調査したもので、われわれは調査に一切かかわっていない。これによると、ユーザーの95%が「シーベル製品に満足し、今度も継続して使用していきたい」と語っており、87%の企業が「営業経費を10%削減できた」など具体的な効果を挙げている。さらに技術的にも、「シーベルは開発しやすいので、社内の開発スタッフだけでエンドユーザーの要件に迅速に対応できる」というコメントもある。

――ライセンスを評価軸にしたシェアの数値より、実際の顧客ベースで、その効果や成功例を見てもらいたいということですか。

チョウ氏 そのとおり。もう1つ追加すると、シーベル製品は他社製品に比べて柔軟性が高いという点も強調しておきたい。かつては「営業プロセスは各社ごとに異なるので、パッケージは導入できない」と言われていたが、NTTコミュニケーションズの例では「自社開発とシーベルの導入と、どちらがより良い選択か」を検討した結果、シーベルを選択した。理由は2つある。1つはシーベル製品のインテグレーション機能が柔軟性に富んでおり、導入しやすかった点。もう1つは、業界固有のベストソリューションを実装しているため、効率的な営業プロセスが構築できること。全体的なシステム構成やプロセスを損なわず、フロント業務を効率化できる。

■SAPのソリューションは「ERP」という枠内だけ

――これもSAP製品の話題になりますが、最新版の「SAP CRM4.0」では23業種に対応したベストプラクティスを搭載し、CRM市場をけん引していこうとしています。さらに、アプリケーション統合プラットフォーム「SAP NetWeaver」を組み込むことで、いままでシーベルが展開してきた「インテグレーションのしやすさ」と「業界別ベストソリューション」の双方を提供していく構えになったわけですが、これについてはどのように見ていますか。

チョウ氏 SAPは、ERPの分野では確かに「ベストプラクティス」を提供してきたと思う。彼らはシーベル社が設立される前からERPの分野で実績を積み、製品を強化させてきた。そこで提供されるベストプラクティスを、他社が模ほうするのは難しいだろう。ただ、それはあくまでも「ERP」という枠に限った話だと考えている。

――今後、シーベル社のビジネス戦略として、どういう方向性を描いているのでしょうか。

チョウ氏 当社は金融や通信、ハイテク業界の大手企業を中心に成功を収めてきており、現在中堅企業での導入も増えている。CRMの場合、ERPのようなビッグバン的アプローチと異なり、最初は部門ごとに導入して横展開する手法が最も効果的だ。こうしたことから、今後も積極的に顧客獲得に注力したい。特にメディア業界や、電力・ガスなどの公共サービスにも展開していき、当社は販売・サポート面でパートナー企業を強力にバックアップしていく予定だ。

(編集局 岩崎史絵)

[関連リンク]
日本シーベル
日本シーベルの発表資料(PDF)

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