IT投資という名の無駄遣いをなくす処方せん

2003/7/9

アクセンチュア 戦略グループSITE担当パートナー 日置克史氏

 「IT-ROI」(ITの投資対効果)は果たして明確に算出可能なのだろうか。アクセンチュアは7月8日、独自のIT-ROI診断プログラムを作成し、顧客企業に対して経営戦略の観点からIT導入を支援するサービスを本格的に開始する。同社によると、一般的にIT投資と呼ばれているものは、投資判断が経営判断として明確化されるべき案件などを指す「戦略的IT投資」と安定稼働、機能向上など構築後のシステムの改訂コストを指す「システム保守費」、運営上必ず発生するコストを指す「運営費」の3種類に分類できる、とする。そして、この3種類のIT投資は、戦略的な意味合いを持つ流動的な支出「機動的IT支出」と継続してコストがかさむ「固定的IT支出」の2種類の支出に分けることができる。

 IT投資全体のこのような分析を基に、アクセンチュアは「現在のITコスト構造というものは、過去の投資の産物であり、過去にさかのぼったIT-ROIの絶対額を問うのは無意味」(アクセンチュア 戦略グループSITE担当パートナー 日置克史氏)とする。つまり、機動的IT支出として投資を行った結果で構築されたシステムは、構築された時点以降は、保守、運営コストが発生する固定的IT支出の対象に繰り込まれてしまい、いつまでたっても、効果の算出を行うことはできなくなってしまう。「現状の課題への個別対処療法はかえって問題を悪化させるだけ」と日置氏が言うように、アクセンチュアでは、個別案件ごとのミクロな視点で投資対効果を測定しようとするのではなく、マクロな視点から投資案件全体を見直し、随時プライオリティを設定していく、という作業を行わなければならない、という前提の下でIT-ROI測定サービスのスキームを作成したようである。

 同社が作成したIT-ROI測定・改善のための論理フローは、まず「固定的/機動的IT支出の分類とトレンド」を分析し、「固定的IT支出の削減計画」を策定する。その後、「機動的IT支出のプライオリティ」を決定し、「エンタープライズ・アーキテクチャを考慮したIT戦略」を策定、「固定的/機動的IT支出を統合したビジネス・ケース」を練り、投資対効果をモニタする仕組みを設計する、という流れだ。当然、ここまで大掛かりな仕掛けを実際に行うには、トップダウンの意思決定と号令、全社的な取り組みという要素が必要不可欠だ。

 2002年8月から現在まで、国内における「アクセンチュア IT-ROI診断」の顧客は10件。金融業がその半数を占める。来期は30件を目標としている。

(編集局 谷古宇浩司)

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