「疑心暗鬼を解消したい」、MSが政府向けの専門部隊

2003/8/7

マイクロソフトの代表取締役社長兼米マイクロソフト副社長のマイケル・ローディング氏

 マイクロソフトの代表取締役社長兼米マイクロソフト副社長のマイケル・ローディング(Michael Rawding)氏は、電子政府関連で政府や地方自治体への働きかけを行う政策企画本部を7月1日付で開設したことを明らかにした。Linuxなどオープンソースの導入が注目される電子政府関連で、マイクロソフトの製品やサービスを正確に政府担当者に理解してもらうのが役割。ローディング氏は「政府へのロビー活動ではなく、政府と対話し支援する活動だ」としている。

 ローディング氏は対Linuxでマイクロソフトが採る戦略が4つあると説明した。第1の戦略はLinuxを理解、勉強すること。第2はWindowsの統合されたプラットフォームを強調し、Linuxと差別化すること。ローディング氏は「マイクロソフトには明確な製品ロードマップがあり、テクノロジの複雑性を解消できる。しかし、Linuxは複雑な部分がユーザーの側に残されている」と指摘した。

 第3の戦略は、第3者機関の分析をアピールすることだ。LinuxはWindowsに対して、TCOやセキュリティで優れているとされるが、ローディング氏は「第3者機関のレポートではTCOやセキュリティでWindowsが優れているという内容もある」として、「アナリストから真のメッセージを伝えてもらう」と述べた。そして第4の戦略は商用ソフトのメリットを強調すること。ローディング氏はオープンソースのGPLについて、「革新や知的財産を損なうものだ」と指摘。「知的財産保護に力を入れる日本のユーザーやパートナー企業は、GPLのリスクを考慮すべきだ」と述べた。

マイクロソフトアジアリミテッドの執行役員 法務・政策企画統括本部 政策企画本部長 大井川和彦氏

 7月1日付で新設した政策企画本部の本部長には、経済産業省出身で4月にマイクロソフトに執行役員として入社した大井川和彦氏が就任した。大井川氏は政策企画本部の役割について、「政府とオープンな対話をして、政府の政策実現をサポートする」と説明。「政策を提案し、政府機関向けにソフトのソースコードを公開するセキュリティプログラム(GSP)の契約も行う」と述べた。

 大井川氏は、マイクロソフトに対する政府からの見方について、「マイクロソフトに対する疑心暗鬼があった」と率直に語った。その原因は「コミュニケーション不足」で、政府の担当者と対話することで、「マイクロソフトに対するイメージを変えていくのがメインの仕事」と述べた。政策企画本部は11人のスタッフが、関係する省庁や代議士、大学、NPOなどをすでに回り始めているという。大井川氏の出身官庁である経済産業省は情報家電の組み込みOSなどでLinuxやトロンの採用を推進しているが、大井川氏は「マイクロソフトのようなグローバル企業を使いながら、国内企業を育てるような考えがほしい」と述べ、業界や政府とのパートナーシップを強調した。

(垣内郁栄)

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