ロシア発のアンチウイルスソフトが日本上陸

2003/9/17

 ロシアのモスクワに本社を持つアンチウイルスソフト企業、カスペルスキー・ラボ(Kaspersky Labs)は16日、日本法人「日本カスペルスキー・ラボ」設立の記者会見を行い、同社製品群を10月中旬から日本市場に投入すると発表した。パッケージはホームユーザー向けの「Anti-Virus」と「Anti-Hacker」、企業やSOHO向けの総合パック「Business Optimal」の3製品を投入する。

日本カスペルスキー・ラボ 代表取締役 山岡大蔵氏(左)とKaspersky Labs CEO ナターリヤ・カスペルスキー氏

 8月に猛威をふるったワーム「MSBlast」に見られるように、ウイルスによる被害が急増している現状を踏まえ、同社代表取締役 山岡大蔵氏は、「日本のコンシューマ市場はアンチウイルス製品を安易にブランドイメージで選んでいる」と指摘し、セキュリティ関連製品は技術の優位性で選ばれるべきだとした。「100%の安全性と正しい情報提供を実現できる製品はカスペルスキーの製品しかない」と技術力の高さをアピールした。

 従来のアンチウイルス製品は、ウイルス定義ファイルによって防御するが、未知のウイルスが登場すると定義ファイルをアップデートするまで危険にさらされるというのがカスペルスキーの考え。同社製品では第2世代ヒューリスティック分析による独自の未知ウイルス検知ルーティンを用いて、約90%の確率で未知ウイルスの検知が可能になるという。また、日々発生する新種のウイルスに対して、1日1〜3回の頻繁なアップデートを提供する。

 同社はセキュリティに特化した企業で、1997年にロシアで設立された。ロシアにおけるアンチウイルス市場のシェアは75%、その後欧州市場に進出し製品出荷数第7位を獲得している。日本法人は同社の海外拠点としては8つ目、アジアでは中国に次いでの進出となる。カスペルスキー・ラボ CEO ナターリヤ・カスペルスキー(Natalya Kaspersky)氏は同社の特長を「アンチウイルス技術で世界トップレベルの技術者を擁している点」と述べるとともに、ウイルス定義ソフトのアップデートに依存する従来の対策に疑問を呈し、「将来発生すると予想されるウイルスの脅威にも対応していく」と、同社の高いテクノロジを強調した。

 もっとも、日本のコンシューマ市場で既存製品からシェアを奪うのは容易ではない。この点は山岡氏も認識しており、「まずはOEMによる企業ユーザーやSIerへの浸透を図り、コーポレート市場で実績をつくった後にコンシューマ市場へ切り込む」というマーケティング戦略を示した。とりわけLinuxに対する強い意欲を見せ、特定のメーカーやディストリビュータについては言及を避けたものの、LinuxへのOEM提供が当面の販売戦略の中心であることを明かした。同社はLinuxのPortフィルタリングやアクセス管理といった開発実績を持ち、他社からLinuxエキスパートをヘッドハントするなど、サーバ市場へのフォーカスを強めている。

 欧州市場ではシマンテック、トレンドマイクロらを抑えてアンチウイルスソフトのOEMでシェア第1位を獲得する同社は、得意のOEM戦略によって「日本市場で2004年度に15億円の売り上げ、5%の市場シェア獲得を目標とする」(山岡氏)と自信を見せた。

(編集局 上島康夫)

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日本カスペルスキー・ラボ

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