64ビットプロセッサ登場で「PCが飛ぶように売れる」

2003/9/25

 日本AMDは64ビット対応のPC向けプロセッサ「AMD Athlon 64 FX」と「AMD Athlon 64」を発売したと発表した。64ビットに対応するOSやアプリケーションは出そろっていないが、AMDではゲームやビデオ編集など高性能を必要とするアプリケーションの広がりで、64ビットプロセッサのニーズが高まると見ている。

左から日本AMD 代表取締役社長 堺和夫氏、マイクロソフト ビジネス&マーケティング オフィサー アダム・テイラー氏、米AMD エグゼクティブバイスプレジデント ロブ・ハーブ氏

 AMDが発売したのは3種のプロセッサ。最上位性能を備えたデスクトップ用プロセッサのAMD Athlon 64 FXと、ミドルレンジ向けのAMD Athlon 64。AMD Athlon 64にはデスクトップ向けとノートPC向けの2種がある。それぞれ32ビットのアプリケーションが稼働する。64ビット対応のアプリケーションが出そろうまで、32ビットのアプリケーションを利用できる。「32ビットをサポートし、64ビットにシームレスに移行できる」というのがAMDが強調したいメッセージだ。

 AMDが公表したベンチマークによると、AMD Athlon 64 FXのパフォーマンスはインテルの「Pentium 4 3.2GHz」を上回る。マイクロソフトのOffice XPを稼働させるベンチマークでは、AMD Athlon 64 FX(32ビットで稼働、以下同じ)はPentium 4に対して、性能が20%上回った。また、3Dゲームの処理では17%、画像・動画の処理では10%上回ったという。日本AMD 代表取締役社長 堺和夫氏は、これらの高性能を生かすことで、「(ゲームやデジタルメディアなどで映画レベルの映像を表現する)シネマティック・コンピューティングを実現できる」と述べた。

 AMDはプロセッサ市場でのライバル、インテルに対して、「同等性能で価格は安い」という戦略を取ることが多かった。しかし、今年4月にサーバ向けの64ビット対応プロセッサ「AMD Opteron」を発表。インテルのItaniumプロセッサが新しいアーキテクチャを採用し、32ビットアプリケーションとの互換をなくしたのに対して、AMDは32ビット互換を維持しながら64ビットへの拡張性を備えたプロセッサを開発する方向で注力している。

 64ビットプロセッサがユーザーに受け入れられるかは、アプリケーションの対応次第となるだろう。マイクロソフトはWindows XP 64bit-Editionのベータ・バージョン(英語版)を本日リリース。正式版を2004年第1四半期(1月〜3月)に発売する考えを示した。日本語版は、開発は決まっているが提供時期は検討中。マイクロソフトのビジネス&マーケティング オフィサー アダム・テイラー(Adam Taylor)氏は、「32ビットは限界がきていると考えていた。グラフィックスやビデオ編集でさらにキャパシティが欲しいというユーザーがいる」と指摘。「飛ぶようにPCが売れる時代がまたくる」と述べた。

 AMDの発表を受けて、富士通はAMD Athlon 64を搭載したPCを発売すると発表した。OSは既存のWindows XPのマルチメディア機能を強化した「Windows XP Media Center Edition」を搭載。ソーテックなどもAMD Athlon 64を搭載したPCの発売を予定している。

(垣内郁栄)

[関連リンク]
日本AMDの発表資料
富士通の発表資料

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