ITニーズはバイオインフォマティクスに眠る
2003/9/30
NECは、体の免疫機能を調整し、がんや感染症、アレルギーなど幅広い病気に対応する「免疫系調節ペプチド医薬品」の開発を支援するコンピュータ・プログラムを、高知医科大学と共同で開発すると発表した。NEC 市場開発推進本部 バイオIT事業推進室 室長の野村豊氏は、バイオ分野でのIT利用について「今後はコンピュータが中心となる創薬が始まる」と指摘、「実験から得られる膨大な情報を数理モデル化、知識化するバイオインフォマティクスに本当のITニーズがある」と述べた。現在、NECなど国内ITベンダが提供するのは、製薬のITインフラ、基本アプリケーションなどが中心だが、今後はシミュレーション、受託開発サービスなど高度な製薬向けサービスが必要になるとの考えを示した。
NEC 市場開発推進本部 バイオIT事業推進室 室長の野村豊氏 |
NECと高知医科大は、人の免疫機能を調整するペプチドの作用を予測するプログラムを開発する。既存の予測プログラムの的中率が20〜30%なのに対して、NECは実験から特定のルールを生成し、コンピュータで繰り返しシミュレーションを行うことで的中率を70〜80%まで高めるという。ペプチドの機能予測には5000億通り以上の実験候補があるが、ルールを作成し適用することで、実験候補を数十まで減らすことができ、創薬開発にかかわる時間、コストの削減につなげられるという。NECと高知医科大では2004年1月にも最初のプログラムを完成させる予定。
NECは、共同開発したプログラムで確認したペプチドの免疫機能活性化情報を、製薬会社に提供。製薬会社が免疫系調節ペプチド医薬品を開発する。NECは情報提供料、医薬品売り上げのロイヤリティなどで、5年後に約10億円の収入を見込んでいる。NEC、高知医科大はプログラムと予測データに関する特許を共同で出願することも予定している。バイオ分野のIT利用というとスーパーコンピュータや数千台のサーバをクラスタ接続したシステムが思い浮かぶが、今回のプログラムはクラスタ接続した6台〜8台のサーバで稼働するという。
NECは1985年にライフサイエンス分野の基礎研究を開始。2000年にはバイオIT事業推進室を設立し、正式にライフサイエンス関連事業に参入した。診断支援や創薬支援、研究支援にフォーカスし、サービスを提供している。基本的にほかの企業や研究機関とのプロジェクトベースでサービスを開発していて、「がん超早期診断支援」や「臨床・バイオ統合情報基盤」「バイオ・ITたんぱく質解析装置開発」などのプロジェクトがある。
(垣内郁栄)
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