[Borland Conference 2003開催]
ボーランド20周年を飾るのは.NET完全対応のDelphi 8

2003/11/5

オープニングキーノートでALMへのフォーカスを語る米ボーランド社長兼CEOのDale Fuller氏

 米ボーランドが主催する開発者向けカンファレンス「Borland Conference 2003」が、米カリフォルニア州サンノゼで11月2〜5日(現地時間)の4日間にわたり開催されている。1000人以上の参加者が集まる今回のカンファレンスはちょうどボーランド設立20周年にあたり、コアな開発者たちの声援も受け、大きな盛り上がりを見せていた。

■ALMへのフォーカスを鮮明にするボーランド

 初日に開催されたオープニングキーノートの冒頭で、同社VP兼チーフエバンジェリストのデビッド・インター(David Inter)氏は、ボーランドの20周年の歩みについて振り返る。同社の基礎となるBorland Ltdは1981年にアイルランドで産声を上げた。その後、1983年5月2日に米カリフォルニア州を本拠にBorland Internationalが設立された。1998年にはいちど名称をInpriseに変更したが、製品名などのBorlandブランドはそのまま維持された。最終的に、2001年にBorland Softwareに名称を戻し現在に至る。

 安価で高速なPASCALコンパイラ「Turbo PASCAL」などのヒット商品で開発者の心をがっちりつかんだ同社は、その後も低価格、高速動作のほか、マルチ・プラットフォーム/プロセッサのサポート、より便利な開発環境の提供を基本理念に、製品のリリースを続けている。特に、ユーザーにさまざまな開発環境や動作環境の選択肢を与えている点を重ねて強調する。それは、開発ベースが.NETへと移行しつつあり、アプリケーション・ライフサイクル・マネジメント(ALM)を標榜(ひょうぼう)する現在においても変わらない。

 スライドで、初期のCUIのようなプリミティブな開発環境から、データ・アクセス対応、ウィンドウベースのGUI環境、各種RADツール、そしてモデリング・ツールを使ったアジャイル開発環境への変革を紹介した。「Design(設計)」「Define(定義)」「Develop(開発)」「Test(テスト)」「Deploy(展開)」という一連の開発プロセスを「Manage(管理)」することで、より開発における生産性をアップしようというALMのアイデアは、アジャイル開発がブームになる中、同社の戦略の中心的存在だ。

 ALMの重要性について、3日のゼネラルセッションで壇上に立った米ボーランドCTOのブレイク・ストーン(Blake Stone)氏は「現在のアプリケーション開発において、年々複雑化するソフトウェアと開発人員の増大によるコミュニケーションなどが問題になっている」と指摘する。セッションの中で講演を行ったMeta Groupのトーマス・マーフィ(Thomas Murphy)氏も「コード開発が主眼だった初期の開発ツールは、IDEの時代になり個々の生産性をアップするプロジェクト重視型に変貌した。それが現在ではALMを実践するILDEの時代になり、コードレベルからサービスレベルで開発を行うようになりつつある」と、開発スタイルが変化しつつあることを述べている。

■.NETフル対応のDelphi 8登場

 このゼネラルセッションが最も盛り上がりをみせたのは、Delphi 8の発表が行われた瞬間だ。ストーン氏がALMへのフォーカスを説明する中、To Doリストと表し、これからボーランドが成すべき課題をいくつか挙げた。そこで「肝心なことを忘れていました」とスライドにDelphi最新版のリリースの項目を追加し、「これは達成されました」と話した瞬間、会場から大きな歓声が上がった。

 発表されたDelphi 8最大の特徴は、.NET Frameworkへのフル対応である。Delphi 7の時点でも.NET開発用のキットはあったが、Delphi 8では.NET開発用に新たにスクラッチして開発しているという。壇上に立ったサイモン・ソーンヒル(Simon Thornhill)氏は、アナリストが予測する「2004年に.NETへの大きなシフトが発生する」という言葉を借りて、Delphi 8がその中で大きな役割を果たすことになるだろうと語る。

 Delphi 8の登場は、Delphi 2以来の大きなムーブメントである。Win16 APIサポートから始まった初代Delphiは、Delphi 2でWin32対応を果たし、現在まで脈々とその伝統を受け継いでいる。今回のDelphi 8の登場で、久しぶりの大きなバージョンアップを果たしたことになる。

 最新版Delphiでの目標は、データベース・アクセスなどでの既存の開発スキルをそのまま活用しつつ、プラットフォーム非依存のCLIやWebサービス対応アプリケーションなど、最新の.NET開発を行えるようにすることである。.NETでサポートされるSOAPなどの通信プロトコルの制御についても、開発者が容易に利用できる手段を提供していくという。

 またDelphi 7時代の多くのアプリケーションは、Delphi 8でそのまま.NETアプリケーションとして利用できるようになるという。実際に利用できるかは、使用するモジュールの種類などに依存しており、Windows FormやボーランドのVisual Control Library(VCL)などがそのまま利用可能だ。壇上で行われた初代Delphiのサンプル・アプリケーション「Fish Facts」をDelphi 8でコンパイルして.NETアプリケーションとして利用するデモストレーションでは、実際に問題なく動作していることが確認できた。

 Delphi 8の登場は2003年12月となる見込みで、日本語版の登場時期や価格は現在のところ不明である。

(鈴木淳也)

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