また伸びたムーアの法則、インテルが新技術を開発

2003/11/6

 インテルは将来のトランジスタ開発について、消費電力と発熱の課題を克服する新材料を開発したと発表した。この新材料を使うことでトランジスタの小型化と高性能を実現する。米インテルのインテル・フェロー兼技術・製造本部 トランジスタ・リサーチ ディレクタ ロバート・S・チャウ(Robert S. Chau)氏は、「ムーアの法則の有効性がさらに10年継続することになる」と述べた。

米インテルのインテル・フェロー兼技術・製造本部 トランジスタ・リサーチ ディレクタ ロバート・S・チャウ氏

 チャウ氏によると、新材料を使ったトランジスタは2007年にも量産化される見通し。現在の半導体産業では、トランジスタの小型化、集積化が進むにつれて、トランジスタ内で電流が漏れて発熱したり、回路にノイズを与える“リーク電流”という現象が問題視されている。現行技術ではトランジスタ内を絶縁するため、二酸化シリコンの薄膜を利用しているが、トランジスタの小型化で二酸化シリコンの厚さは、原子数個分になっている。極限まで達した二酸化シリコンの薄膜化で完全な絶縁が難しくなり、リーク電流が発生しているのだ。

 インテルは、二酸化シリコン薄膜の代わりに利用できる新材料として「高誘電率ゲート絶縁材」(High-k)を開発した。High-kはリーク電流を削減できる厚みと、トランジスタ性能を向上させる高い誘電率を持つ物質。インテルによると、High-kは二酸化シリコンに比べてリーク電流を100分の1以下に抑制し、消費電力、発熱を抑えながらも高性能を実現できるという。

 しかし、現行のトランジスタではHigh-kを導入することは、難しい。高誘電率のHigh-kを使うとトランジスタのスイッチ電圧が上昇したり、電子の流れが停滞するなどの問題が確認されているからだ。そのためインテルは、High-kを使いながらもこの問題を回避する新たな材料「メタル・ゲート」を開発した。High-kとメタル・ゲートを併用することで、トランジスタの小型化、集積化がさらに可能になる。

 プロセッサ開発が高度化するに従い、ベンダによる技術開発、工場への投資も増える傾向にある。体力のないベンダは技術トレンドを追うことが難しくなり、顧客の支持を失う可能性がある。インテルの取締役 開発・製造技術本部長 城浩二氏は、今後のトランジスタ、プロセッサ開発について、「基礎開発から量産まで垂直に業務を持ち、顧客のさまざまな要望にこたえることができるベンダが最も有利」と述べて、インテルのテクノロジに自信を見せた。

(編集局 垣内郁栄)

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