富士通もグリッド、Systemwalkerがバージョンアップ
2003/12/2
富士通は企業システムをグリッド・コンピューティングに対応させ、システムの安定稼働、管理コストの削減を可能にする統合運用管理ソフト「Systemwalker V11」の販売を開始したと発表した。同社製ハード、ソフトと密接に連携し、他社のデータベースやWebサーバをグリッド環境で稼働させるためのプラットフォームを構築できるのが特徴で、富士通のIT基盤「TRIOLE」(トリオーレ)を強化する。
富士通のソフトウェア事業本部 運用管理ソフトウェア事業部長 鈴木恵司氏 |
サーバやストレージ、ネットワークなどのITリソースを仮想化し、必要なサービスに対して必要なタイミングで必要なリソースを割り当てるというグリッド・コンピューティングのビジネス利用については、富士通以外にもオラクル、IBM、サン・マイクロシステムズなどが構想を発表している。富士通のソフトウェア事業本部 運用管理ソフトウェア事業部長 鈴木恵司氏は他社のグリッド・コンピューティングについて、「買収によってプロビジョニングを実現したり、運用管理ソフトに業務管理、ポリシー管理ソフトを適応させている」と指摘したうえで、「富士通はハードやクラスタリングソフトと密に連携し、グリッド・コンピューティングのフレームワークをつくった」と説明。システムの安定稼働を実現し、管理コストを従来の約3分の1にすると強調した。
富士通はSystemwalker V11ファミリで、ITリソースを仮想化・割り当てるソフトとして「Systemwalker Resource Coordinator」を発売した。割り当てたリソースに対して業務内容を複写し、迅速にサービスを運用できるようにする機能もある。Systemwalker Resource Coordinatorは、同じく新発売の「Systemwalker Service Quality Coordinator」と組み合わせることで、レスポンスタイムに基づきエンドユーザーの視点でサービスレベルを監視する。システムに障害が発生した場合でも、管理者が各リソースの状況を簡単に把握でき、障害を素早く修復できる。また、Systemwalker V11ファミリの「Systemwalker Centric Manager」と組み合わせて、サーバへのパッチ適用を自動化するなど自律化の機能も強化した。
Systemwalker Resource Coordinatorは2004年1月末の出荷。144万円から。Systemwalker Service Quality Coordinatorは2003年12月末出荷で84万円からとなっている。
富士通が社内で測定した結果では、作業者1人がSolarisサーバ3台を新規セットアップした場合の時間は、Systemwalker V11を使うことで従来の27時間から8.5時間に短縮。またシステムファイルのリストアでも従来1時間かかっていた作業が10分に短縮できたという。Systemwalker V11は富士通子会社のインターネット・サービス・プロバイダ、ニフティに導入され、Webサーバの自律制御などに利用している。
現状ではSystemwalker Resource CoordinatorがITリソースを仮想化、プロビジョニングできるのは、富士通のブレードサーバ「PRIMERGY BX300」に限られる。2004年7月以降にはUNIXサーバ「PRIMEPOWER」やストレージ「ETERNUS」など同社のほかのサーバやストレージにも対応を進める考え。また、APIを公開し、オラクルやマイクロソフトなど他社製アプリケーション、他社製ハードへの適用も進める。鈴木氏は「他社製品は自らの世界だけで仮想化、プロビジョニングする部分最適。Systemwalker V11を使って運用管理することでその世界を含めて、ほかのシステムとの全体最適が可能になる」と述べ、他社製品を含めたグリッド・コンピューティング構築の可能性を示唆した。
(編集局 垣内郁栄)
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