[OracleWorld 2003開催]
「Oracle 10g」が正式発表、すべてはグリッドのために

2003/9/10

米オラクルのCEO室担当エグゼクティブ・バイスプレジデント チャールズ・フィ リップス氏

 米オラクルは、グリッド・コンピューティングに対応した次世代のデータベース「Oracle Database 10g」と、アプリケーションサーバ「Oracle Application Server 10g」を米国のサンフランシスコで開催中のイベント「OracleWorld 2003」で正式に発表した。米オラクルのCEO室担当エグゼクティブ・バイスプレジデント チャールズ・フィリップス(Charles Phillips)氏は、Oracle 10gについて「孤島化したコンピューティングのコストや安定性の問題を解決する」と強調。「グリッドはユーティリティ・コンピューティングを実現する重要な要素だ」と述べた。

 Oracle 10gは、これまで科学技術計算分野で分散処理に利用されてきたグリッド技術をエンタープライズ・アプリケーションに展開した製品。フィリップス氏はオラクルが考えるグリッドについて、リソースをプールすること、すべてのレイヤで仮想化を導入し、1つのシステムとして管理やプロビジョニングすること、ポリシーに基づいた自動のロードバランシングをすること、の3点を説明した。これらを実現することで、必要なときに必要なだけのコンピュータ・リソースを利用することができる。あらかじめ大規模なシステムを構築しなくても、会社の規模に応じてシステムを簡単に増やすことが可能。また、複数のデバイスやアプリケーションを使っていても、管理は一元的に行うことができ、運用管理コストを大きく下げることができる、というのがオラクルが考えるグリッドのメリットだ。

 Oracle 10gでは自動管理機能がキーになる。Database 10gには自動管理機能「Oracle Enterprise Manager 10g」を搭載。Enterprise Manager 10gは自動でデータベースを監視し、パフォーマンスと信頼性を最適なレベルに保つ。必要な際は管理者に対して警告とアドバイスを通告し、対応を求める。また、Enterprise Manager 10gのWebベースコンソールである「Database Control」は不適切なアプリケーション・コードを認識し、適切なコードを通知。データベースのチューニングも自動で行う。

 Oracle Enterprise Manager 10gにはグリッド全体を管理する「Oracle Grid Control」も提供される。Grid Controlはデータベースやアプリケーション、ストレージなど、グリッド上のシステムすべてを単一のコンソールで監視、管理可能なソフトとなる。

 オラクルは、「Oracle Real Application Clusters」(Oracle RAC)の新バージョン「Oracle Real Application Clusters 10g」も発表した。RAC 10gはデータベース・クラスタの作成、操作を簡素化したのが特徴。UNIX、Linux、Windowsなど異なるプラットフォーム間でRACを稼働させるケースでも、クラスタを簡単にインストールすることができる。また、RAC 10gではクラスタ化されたデータベース間で処理能力をダイナミックに変更する新しいクラスタ負荷管理用のソフトが提供される。オラクルではこの技術を「キャパシティ・オンデマンド」と呼んでいる。

 SANやNASでネットワーク化、仮想化されたストレージの管理もDatabase 10gのポイント。Database 10gにはストレージ構成や管理を簡素化する新しいソフト「Automatic Storage Management」(ASM)が提供される。ASMを使うことで、管理者は、サーバごとにどのストレージを使うか、という管理の問題を意識する必要がなくなる。ストレージの負荷分散やパフォーマンス管理も自動化され、管理者はストレージを監視する必要がなくなる。

 Application Server 10gもアプリケーションの負荷分散を自動化し、月末の給与計算処理など必要なコンピュータ・リソースが増大するときに、自動でサーバやストレージ、ソフトのリソースを処理に割り当てることができる。1つのコンピュータ・ノードで障害が発生した際に瞬時に別のノードに処理を引き継がせるフェイル・オーバー機能も強化。グリッド上で稼働するWebサービス対応アプリケーションを作成する新しい開発ツールも、提供される。

 グリッド・コンピューティングは科学技術計算分野で先行。現在はIBMなど多くのベンダがユーティリティ・コンピューティングを実現する技術として注目している。しかし、フィリップス氏は他社が目指すグリッドとオラクルのグリッドについて、「他社は新たにハードを購入する必要がある」と指摘。「オラクルが目指すグリッドは既存のプロセッサなどを使い、需要に合わせてシステムのリソースを増やすことができる」と説明し、「システムを増やすのではなく、システムを“再配置”するのがオラクルが考えるグリッドだ」と強調した。

 オラクルは各新製品を年末までに出荷したい考え。国内での提供次期は未定だが、すでに国内12〜13社に対してベータ版を先行導入し、検証作業を進めている。また、価格は年末に発表予定だが、フィリップス氏は「低価格なハードやOS、低い運用管理コストを使うことでTCOはかなり下げることができる」と述べた。ライセンス体系もサービス指向に基づき、「もっとシンプルな形にできないか」(フィリップス氏)を検討しているという。

(垣内郁栄)

[関連リンク]
日本オラクル
オラクルの発表資料(Oracle Database 10g)

[関連記事]
「Oracle 10gは30分でインストールが完了します」とオラクル (@ITNews)
オラクル次期データベースは「グリッドの名の下に」 (@ITNews)
日本IBM、Linux+AMD64でグリッド市場の覇権を狙う (@ITNews)
1万台のPCでグリッド実験、600年分の計算が4カ月に (@ITNews)
オラクルの次期DBは"ブラックボックス"になる (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)