MS帝国の逆襲とLonghorn
2003/12/12
米マイクロソフト .NETデベロッパ プラットフォーム チーム ジェネラル・マネージャ デビッド・トレッドウェル氏 |
12月9日から2日間にわたって開催されたマイクロソフトの開発者向けイベント「.NET Developers Conference 2003」は、サブタイトルに“PDC 2003 HighLights”と銘打たれたごとく、10月27日に米国で開催されたProfessional Developers Conference(PDC)のエッセンス情報をコンパクトに提供する催しであった。PDCのエッセンスとはもちろん、Windowsの次期バージョン「Longhorn」の機能紹介である。PDCでビル・ゲイツ(Bill Gates)氏が直々に解説したように、Longhornには、新グラフィックス・プレゼンテーション・レイヤ「Avalon」やWebサービスを開発するためのプログラミング・モデル「Indigo」、リレーショナル・データベース技術を活用した新ファイルシステム「WinFS」という3つの“革新的な技術”が組み込まれた。これらの新技術は、Longhornを従来のような単なるオペレーティング・システムという位置付けから、ITインフラ上のプラットフォームという、より広範なイメージで捉えるしかないプロダクトに押し上げる。
Longhornに搭載される開発者向け新技術の紹介、これが「.NET Developers Conference 2003」のテーマだったわけだが、マイクロソフトは将来、開発者が作り上げるであろう“未来のアプリケーションの姿”を提示しつつ、このようなアプリケーションが動く環境、そしてそのようなアプリケーションを開発する環境とはいかなるものか、という逆説的な解説を試みた。「機能はリッチだが、使用コマンドは少ない」というマイクロソフトが想定する次世代のアプリケーションを考えるうえでのポイントは2つある。1つは、リッチな機能を実現するプラットフォームとは、Officeのようなファットクライアントなのか、WebブラウザをクライアントとしたWebアプリケーションなのか、それともFlashのような技術を用いたようなアプリケーションなのか、という点。もう1つは、ユーザーインターフェイスの開発に対する重要性は今後もさらに高まるだろう(少なくとも.NET環境においては)という点である。
Longhornで新しく定義されるAPIはWinFXという。Win32、.NET Frameworkの各種サブシステムを維持しつつ、改良を加えたAPI群だ。WinFXの中で、プレゼンテーション・レイヤを担当するのが前述したAvalonであり、Webサービスなど通信部分を担当するIndigo、ファイルシステムであるWinFSが基盤部の上にそれぞれ構築される。APIという概念よりもミドルウェアという概念で考えた方がいいかもしれない。というのも、WinFXベースで開発したアプリケーションは、.NETのコンセプト(マイクロソフトが考える次世代のアプリケーション)をOSレベルでサポートすることが可能になるからだ。つまり、WinFXというAPIは、先ほど指摘したマイクロソフトが目指す新たなアプリケーションの姿とその開発環境を読み解く2つのポイントのうち1つ目のポイントの解答を含んでいるのである。
どういうことか。来日した米マイクロソフト .NETデベロッパ プラットフォーム チーム ジェネラル・マネージャ デビッド・トレッドウェル(David Treadwell)氏は「国内のハードウェアベンダと協力して、今後出荷する予定のPCにはすべからく.NET Frameworkをあらかじめ載せることになる」と話す。これは、.NETで開発したアプリケーションが自動的に動作する環境を作り上げることを意味する。WebブラウザがあればJ2EEアプリケーションが自動的に動作するように、Windowsがあれば自動的に.NETアプリケーションが動作する環境を作り上げるのである。しかも常に通信可能な状態であり、Webブラウザよりも強力な表現力を持つ。例えば、マクロメディアのFlashで構築したアプリケーションのように、だ。「Flashは確かに魅力的な技術だけど、OSと密接な連携がとれていない。そこが弱点だね」とトレッドウェル氏がいうように、マイクロソフトがFlashに対抗するような技術あるいはアプリケーションを作るということではなく、あくまでOSベースで環境を作り上げてしまおうという往年のマイクロソフトが夢見た壮大なOS独占体制の構築が着々と進行中なのである。
そして、このような構想で重要な地位を占めるのが、アプリケーションのインターフェイス作成で威力を発揮するであろうVisual Studioの次期バージョン「Whidbey」の存在である。JavaServer
Faces(JSF)の登場は明らかにビジュアル開発ツール面で弱かったJ2EEサイド(サン・マイクロシステムズか)によるVisual Studio対策だが、トレッドウェル氏は「真似されるのは光栄なことだ。われわれのやってきたことが間違っていなかった証拠だよ」と不敵な笑みを浮かべるのみである。そして、「マイクロソフトは技術水準でオープンソース・プロダクトの先を行く義務があるのさ。それこそが、デファクト・スタンダードの名に恥じない技術を提供できる企業の存在価値だからね」と、オープンソース技術の猛追をさらりとかわす。
マイクロソフトはわが道を行く。その路線に変わりはないどころか、さらに強化される見込み大である。
(編集局 谷古宇浩司)
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