FOMAは505iシリーズの上位機種となる

2003/12/19

 NTTドコモの第三世代(3G)携帯「FOMA」といえば、高速データ通信、TV電話機能などを挙げるまでもなく、これまで(2G)の携帯電話とは一線を画し、まったく異なる新しいテクノロジの携帯電話として売り出してきた。

NTTドコモ iモード企画部長 夏野剛氏

 しかし、現実にはFOMAのそうした機能を利用する需要はなく、またその需要を刺激するキラーアプリケーションも登場していない。さらに高い端末価格や通信エリアの狭さ、といった複数の要因のため、FOMAはスタートダッシュでつまずいた。今年、端末価格が下がってきたため、契約数は2003年12月11日現在で170万に、全国の人口カバー率も2004年3月末までには99%を目標とし、さらに来年には地下鉄などでも利用できるようにする(2003年12月末までには、都営地下鉄4路線45駅で利用できるようになる)。

 つまり、ユーザーは2Gと別なテクノロジであり、別の携帯電話として位置付けられているように見えるFOMAには興味がないのである。新機能、例えばカメラ付き携帯電話も2Gで実現できている現状でいえば、新機能・高機能でさえ、ユーザーにはFOMAの武器としては映らない。

 NTTドコモが12月18日に発表したFOMAの新機種FOMA900iシリーズは、まさにそうしたことを認め、「505iシリーズに飽き足らない人に、新しいiモードの提案という形で」、その上位機種を、といったマーケティング戦略に打って出た。新機種のシリーズ名称が従来のN205xやN210xなどの4けたから900にした点、さらに機種名の最後に“i”を付けた点にもNTTドコモの危機感が表れている。

 NTTドコモ iモード企画部長 夏野剛氏は、「(FOMAをスタートしてからの)2年間でいろんなことを学んだ」と語り、さらに「今回は自信を持っている。会社人生をかけてやっている」と述べた。夏野氏はFOMAに関して真剣に取り組み、普及に弾みをつけ、一気にFOMAの普及をもくろんでいる。「ドコモとしてはいえないが、個人的には来年度に500万以上はいかせていただきたい」と、その本音を語る。

 発売される全機種には、共通して次の機能が搭載される。つまり、最低限これらの機能を搭載した機種を、FOMAの900iシリーズとして定義したわけだ。

  • メガピクセル対応
  • QVGA液晶
  • デコメール
  • Javaアプリの実行領域が500KB
  • 赤外線機能・2次元バーコードリーダー搭載
  • TV電話対応(アバター付き)
  • 着モーション対応
  • 大容量Flash(100KB)
  • 外部メモリ

 デコメールとは簡単にいえばHTMLメールのこと。背景色、文字の色やサイズを変えることができるようになった。さらに撮影した写真やアニメーション画像も添付できる。TV電話対応(アバター付き)とは、自分自身の映像の代わりに、あらかじめ登録されているキャラクター(いわゆるアバター)などに置き換えられるもの。キャラクターは数字ボタンを押すことで表情を変更させることができる。あらかじめインストールされているキャラクターのほか、新たにダウンロードしたキャラクターも利用可能だ。

FOMAのイメージキャラクターにはこれまでどおり俳優の坂口憲二さんのほか、今回から女優の長谷川京子さんも起用される

 Javaアプリは、FOMAの現在の機種(2102Vシリーズ)や505iシリーズと比べてコンテンツサイズ(JAR)で最大30KBから約3倍の100KBへ、データ記憶領域(スクラッチパッド)で最大200KBから2倍の最大400KBへと拡大された。Macromedia Flashは505iシリーズで初めて搭載された機能だが、その容量は最大20KB。900iシリーズはその約5倍の最大100KBに拡大された。

 これらJavaアプリとFashの容量が拡大したことにより、これまで以上にリッチなプログラムを動作させることができるようになる。実際、「ドラゴン・クエスト」や「ファイナルファンタジー」が動作するようになる(Javaアプリ)。Flashでは、900iシリーズを利用している場合、「iMenu」をFlashで表示されるようになるという。

 発売される機種は7機種。うち5機種(D900i、F900i、N900i、P900i、SH900i)は2月の発売予定で、その後「遅れて春先」には、ビデオ機能を追加したP900iV、新機能(タッチパネル液晶、Bluetooth)を搭載したF900iTが発売される。

 軽量化も一段と進めた。先行して発売される5機種で、最も軽いのはN900iの115g、最も重いのはP900iとSH900iの130g。さらにCPUの消費電力、メモリ・マネジメント、無線の待ち受け時のコントロールなどのチューニングを行った結果、連続待ち受け時間も300時間(移動時)となり、これらの部分でも「第二世代並み」(夏野氏)を実現したと強調した。

 さて、こうしたNTTドコモの戦略は当たるのだろうか。

(編集局 大内隆良)

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