デルのもう1つの差別化、それはサービスビジネス

2003/1/7

 企業にとってPCは必需品になった。1人1台のPCは当たり前になりつつあり、企業のさまざまな業務に利用されている。いまではクライアントPCがなくては、受注・発注、発送などの業務が滞ってしまうという現実がある。いまやPCはビジネスのライフラインとなっているのだ。

 しかし、PCを利用しているユーザー企業にとって、大きな問題が、そのPCの管理だ。企業全体で何百、何千とあるPCをどう管理するか、そのコストをどのように削減するかは、企業には死活問題になっている。企業にとっては、IT投資をする以前にクライアントPCの管理で追われてしまう可能性もある。ハードベンダであるデルは、企業に対してサポートをメニュー化し、場合によってはユーザーになり代わって対応するという解決策を提示する。

デル サービス・マーケティング本部 本部長 安斉孝之氏

 大げさに述べれば、デルはPCで培ってきたBTO(Build to Order)モデルを、サービスやサポートにも広げようとしている、ということだろうか。同社のWebサイトでPCを購入する場合、サポートなどもメニューから選択でき、それは即座に購入金額に反映される。さらに「現在企画しているのは、個人を含め、夜中でもサポートしてほしいという要望がある。こうした要望を汲み取っていきたい」と語るのは、デル サービス・マーケティング本部 本部長 安斉孝之氏だ。

 こうした法人や個人へのサポート/サービスビジネスは、さらに同社独自のCFI(Customer Factory Integration)やDMS(Dell Managed Service)といった形をとり、拡大を続ける。

 「CFIは主に法人向けのサービスで、お客さまのデスクトップ環境、アプリケーションなどのイメージをいただき、それを工場で組み込んで出荷する」(安斉氏)ことで、ユーザーはPCを起動すればすぐに利用できるようになる。さらにIPアドレスや通常デルが扱っていない周辺機器をも組み込むことも可能だという。

 そうして導入したPCを、ユーザーに代わって面倒をみよう、というのがDMSだ。DMSは以前から米国本社では提供していた。日本ではユーザー企業のIT部門のヘルプデスクを代わりに請け負うヘルプデスクサービスはあったが、ユーザーのシステム全体をユーザーに代わって運用管理の面倒を見る、というDMSのサービスは、日本では提供していなかった。安斉氏は「現在、DMSの一部を提供しているが、いま、いろいろと仕掛け、提案している段階」とし、今年中にはDMSを本格的に提供できるようにしたいという。

 「このサービスは、マジョリティ(企業で使っているPCの多くが)がデル製の場合に有効だ。それはコスト削減効果が高いからだ」と安斉氏は語り、クライアントPCなどを1つのベンダに絞った場合の運用管理の優位性を強調する。さらに「当社の製品には工場出荷時にタグナンバーを入れている。これにより、1台1台のマシンの構成も分かる。これは、他社にはできないことだ」という。

 デルが目指すのは、単にユーザーのIT部門の代替だけではなく、IT資産の効率的な管理の実現にある。現在利用しているPCの入れ替え、今後のPCの導入計画、その利用形態(買い取りか、リースかなども含め)、さらには最もユーザーにとっていいサポート契約などをユーザーに代わって行う。

 現在ハードベンダ各社は運用管理のアウトソーシングビジネスに力を入れるが、その中心はサーバやサーバで構成されるシステムが中心。クライアントPCを含めて管理を代行しようというベンダは少ない。

 デルが目指すのは、ハードの価格の安さの追求とともに、サポートサービスのメニュー化、充実化を図ることで、他社との差別化を図ろうというもの。他社とは多少異なるそのモデルは成功するのだろうか。

(編集局 大内隆良)

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