ITFがイーシー・ワンと提携した理由、あるいはイーシー・ワンの思惑
2004/1/17
アイ・ティ・フロンティア システム営業統括本部 xWeb事業本部 マーケティング推進部 リーダー 木村和之氏 |
アイ・ティ・フロンティア(以下ITF)は、同社が国内総代理店を務めるJ2EEアプリケーション向け運用・管理ツール「Introscope」(米ワイリー・テクノロジー)に関連するサービスを、イーシー・ワンとの提携の下で強化していくと発表した。この提携によって両社は、J2EEアプリケーション開発に関するコンサルテーションサービスを提供していくことになる。基本的な着地点は同一であり、だからこそ提携が成立したのだが、両社には当然、それぞれの思惑がある。
両社の発表を基に今回の提携内容を簡単に記すと以下のようになる。すなわち、「ITFとイーシー・ワンは、Introscopeを使ったJ2EEアプリケーション向けコンサルティングサービス(主に性能・運用管理に焦点を絞る)を共同で開発し、両社の顧客に提供していく」「イーシー・ワンが開発、販売するcFrameworkをIntroscope上で使用するためのテンプレート“PowerPack for cFramework(仮称)”を開発し、cFramework上のアプリケーションについて、性能情報のモニタリング、レポーティング、問題分析および障害アラートなどを可能にする製品、サービスを顧客に提供する」の2点である。
イーシー・ワン 取締役副社長 最首英裕氏 |
上記の提携内容を、ITF側からみてみると何が考えられるだろうか。そもそもITFにとっては、Introscopeの単体販売からの脱却を目指す解決策が必要だったのだろう。ある製品の拡販を考えるということは、その製品が生かされるべき“物語”を考え出すということでもある。J2EEを基盤としたWebアプリケーションの構築という比較的新しいソフトウェア開発のトレンドにおいて、Introscopeが提供するパフォーマンス・チューニングやシステムの運用管理という側面には、(ITFが想定する)顧客企業が切実な必要性を感じるほどの“物語”が不在だったといえる。もちろん、(J2EEに限らず)Webアプリケーションのパフォーマンス・チューニングという側面は、開発工程全体に大きな影響を及ぼすとして、徐々にその重要性が認知され始めているものの、具体的に、実際の開発工程内に汎用的なプロセスとして組み込まれるまで成熟するには至っていないのが現状である。
アイ・ティ・フロンティア システム営業統括本部 xWeb事業本部 マーケティング推進部 リーダー 木村和之氏はこの点について「(J2EEの)Webアプリケーションを旅客機とすると、Introscopeは計器である。問題は、その計器の仕組みを理解し、運用できる人間をどのように教育するか。さらにいえば、そのようなスキルを持った特定の人間に頼らなくても大丈夫なように、汎用的なプロセスとして、開発プロセスに組み込むことが重要になってくる」と話す。つまり、ここで重要になってくるのが、Introscopeを中心とした“物語”、つまりコンサルティングといわれるサービスなのである。だが、一概にコンサルティングといっても千差万別である。そこでITFが選択したのが、Webアプリケーション開発市場において独特の位置を占めるイーシー・ワンだった。
EJBコンポーネントをはじめとしたコンポーネントベース開発の積極的な推進者として、イーシー・ワンはJ2EEベースのWebアプリケーション開発ベンダの中で独特の位置を保っている。同社の理念は、将来的なソフトウェア部品産業の創造という壮大なものである。そもそも、ソフトウェア・コンポーネントが注目を浴び始めたのは、標準化されたソフトウェア部品を共有化し、ソフトウェア開発という非常に煩雑な作業を単純化しようとの理念に基づくものだった。しかし、「いきなり結婚せずにまずは同棲(どうせい)した方がいい」とイーシー・ワン
取締役副社長 最首英裕氏がいうように、コンポーネント化されたソフトウェア部品が流通し、市場が形作られるのは、簡単なことではなく、「まずは1社内で開発標準なりプロセスなりを確立し、ノウハウを蓄積していかなければならない。さまざまな企業でノウハウが蓄積されて初めて、ソフトウェア部品のコンポーネントが共有化できる端緒につく」と話す。
さらに、最首氏は「部品コンポーネントを共有化するには、開発プロセスが共有される必要がある。そのためには、ビジネスのプロセスが共有化される必要がある」というように、ソフトウェア部品の共有化をめぐるコンセプトは、具体的に考えていけばいくほど、次から次へと上流側に遡っていくのである。そこで、イーシー・ワンが目指すのが「IT業界における設計事務所」(最首氏)であり、cStyleという同社が蓄積してきたソフトウェア開発作業のベストプラクティスを集積したプロセスモデルを核としたコンサルティングビジネスの展開ということになる。今回のITFとの提携は、同社のこのような戦略の一貫としてとらえることができるのである。
(編集局 谷古宇浩司)
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