J2EEの運用面を軽視していませんか?

2003/7/30

米Wily Technology 社長兼最高経営責任者 ディック・ウィリアムズ氏

 Javaアプリケーションがミッションクリティカル分野でメジャーな存在になりつつある現在、その複雑なアーキテクチャ全体をどのように管理し、確実な運用体制を構築するか、という新たな問題が浮上しつつある。日本国内と比較してJ2EEによる基幹システム開発の需要が著しく高い米国では、すでにシステムの設計段階から運用、管理を視野に入れた取り組みを行っている企業が多い。米Wily(Wily) Technology 社長兼最高経営責任者 ディック・ウィリアムズ(Dick Williams)氏は「(J2EEに代表される)新たなコンピューティング環境の普及は単にITのトレンドという限定された話題ではなく、企業の経営の根幹にかかわる問題」と指摘する。メインフレームが誇る堅牢性や保守性と同等以上の“性能”をJ2EE環境の基幹システムに求めるならば、システムの問題をいち早く発見し、対策を行う仕組みが必要なのは当然のことかもしれない。Wilyが開発、販売するWebアプリケーションのパフォーマンスモニタ製品「Wily Introscope」についてウィリアムズ氏は「1度使用したら、2度と後戻りはできない」と胸を張る。

 実際、稼働し始めたシステムがパフォーマンス不良を起こし、ビジネスに甚大な被害を与えるケースは多い。「復旧にかかるコストや企業の信頼の失墜といったマイナス効果は計り知れない」(ウィリアムズ氏)。同社の顧客であるJP Morgan Chaseは、Wily Introscopeの導入によって、システムのダウンタイム頻度の低減、パフォーマンス改善、問題解決のために要する作業のコスト削減などで、年間約50万ドルのコスト削減を実現した、とウィリアムズ氏は言う。JP Morgan Chaseでは、システムが利用している外部のクレジット認証サービスのトラブルで顧客を失う機会が多々あったのである。

アイ・ティ・フロンティア システム営業統括本部 xWeb事業本部 マーケティング推進部 リーダー 木村和之氏

 米国では、SLA(サービス・レベル・アグリーメント)の締結を行い、それに反すると金銭的なペナルティを課すことや政府機関(例えば、Federal Communications Commission)の規制といった法的なペナルティの存在もあり、システムのパフォーマンス低下やダウンタイムの発生が明瞭な形の罰則を生み出すという事情がある。このことから、オープン技術の集積であるJ2EE環境の予測不能な不具合をいかに未然に防ぐか、という運用、管理のポイントは、システム設計の段階から考慮しなければならない重要課題となりつつある。このようなニーズもあり、北米市場では、IBM、BEA Systems、Sun Microsystems、OracleといったJ2EEアプリケーション・サーバベンダとアライアンスを締結、各ベンダ対応の管理、監視機能の共同開発を行っている状況だ。また、TivoliやOpenViewといったメジャーなシステム管理ソフトとも統合を完了させている。「つまり、Tivoli、OpenView、BMCのPatrol、CAのUnicenterは競合ではない」とウィリアムズ氏。

 米国と比較すると、日本市場は、パフォーマンス管理市場は今後立ち上がるだろうといえる状況。国内での販売、サポートを行うアイ・ティ・フロンティア システム営業統括本部 xWeb事業本部 マーケティング推進部 リーダー 木村和之氏は「確かに、J2EEの運用面は軽視されていた」と話す。しかし、米国の状況は数年も経たずに日本へ波及してくる。同社では、2003年秋ごろをめどに、パートナーと組んで、J2EEシステムの運用、監視コンサルティングビジネスを開始する予定で、「構築の段階から運用面を視野に入れた緻密なコンサルティング・メニューを提供していく」(木村氏)と意気込む。また、国内でも米国のように、アプリケーションサーバベンダとの積極的な協力関係を結び、パフォーマンス管理の啓蒙とともに拡販につなげていく。

(編集局 谷古宇浩司)

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