リッチクライアントではない、アドビのドキュメントソリューション

2004/2/11

 米アドビ システムズのプロダクト マーケティング ディレクター ショーン・カドゥー(Shawn Cadeau)氏は、同社が進めるPDFをベースにしたドキュメントソリューションについて、「オンラインからオフライン、社内から社外まで包括的にサービスを提供できるのは、アドビのインテリジェント・ドキュメント・プラットフォームだけだ」と述べ、「Macromedia Flash」や「Microsoft InfoPath 2003」など、他社が展開するリッチクライアントサービスとの違いを強調した。

米アドビ システムズのプロダクト マーケティング ディレクター ショーン・カドゥー氏。アドビが買収したドキュメントサーバベンダであるアクセリオ出身

 アドビのドキュメントソリューションは3つの要素で構成される。1つ目の要素は「Adobe PDF」。ドキュメントを正確にレイアウト、印刷するプレゼンテーションの要素で、ビジネスルールに従って、PDFに入力された数値を計算したり、XMLスキーマを取り込んで、XMLデータを生成することができる。2つ目はアドビがユニバーサル クライアントと呼ぶ「Adobe Reader」やWebブラウザの要素。ドキュメントに対してアクセス管理や権限の制御ができる。3つ目は「ドキュメント サービス」。XMLを使ってドキュメントをバックエンドのシステムと連携させるサーバ機能を指し、フォーム管理、レビュー、アクセスコントロールなどを実行する。

 これらの要素のうちで、ショーン氏が他社サービスとの差別化のポイントになると考えているのが、オフラインでドキュメントを扱うことができる機能とファイアウォールを越える他社との連携の容易さだ。アドビのドキュメントソリューションを導入したシステムであれば、インターネットから対応するPDFファイルをダウンロードし、オフラインでデータを入力できる。Macromedia Flashなどではオフラインでの作業は難しい。また、ショーン氏はフォームの作成、管理についてもアドビのドキュメントソリューションが先進的という認識で、「Flashは基本的なフォームの機能は対応し始めているが、ビジネストランザクションの処理に対応できるようになるには時間がかかるだろう」と述べた。

 ファイアウォールを越えて他社と連携できるシステムではXML対応がポイントになる。もちろんMicrosoft InfoPath 2003など他社製品の多くは、XMLデータを使った連携機能を備えているが、「さまざなXMLスキーマがあり、スキーマ間でデータのやりとりができていないケースがある」という。アドビのドキュメントソリューションはアドビ以外のXMLスキーマにも広く対応。クライアントツールであるAdobe Readerは、ほとんどのPCにインストールされ、ユーザー環境が整っているのも大きい。一方でInfoPath 2003はMicrosoft OfficeやInfoPath 2003をインストールしていないとXML連携の機能を利用することは難しい。ショーン氏は「InfoPathとアドビのドキュメントソリューションは、比較にならない」という認識だ。

 アドビはドキュメントソリューションの展開先として金融、官公庁、製造などを対象にしている。いずれも大量のドキュメントを使う業種で、さらに業務効率化の圧力が大きいという点が共通している。ドキュメントベースを維持しながら、ビジネスプロセスを効率化し、TCOを下げるソリューションとしてアドビは売り込んでいるのだ。さらに医療などほかの業種に対してもパートナー企業などと協力し、展開する方針。パートナーと協力し、コンテンツ管理やアーカイビングの機能をソリューションに追加することも検討している。

 ちなみにアドビでは“リッチクライアント”という言葉は使っておらず、さまざなインテリジェンスを持たせたクライアントツールとして“ユニバーサルクライアント”という言葉を使っている。「リッチクライアントという言葉には、何か有料のクライアントツールというイメージがあるんだよね」とショーン氏は説明した。

(編集局 垣内郁栄)

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