オラクルが八方美人に? 「Customer Data Hub」の狙いは

2004/2/28

 日本オラクル マーケティング本部 本部長 清水照久氏は、今年半ばにも発売予定の次期業務アプリケーションソフト「Oracle E-Business Suite 11i.10」(EBS)に搭載する顧客データ統合の新機能「Oracle Customer Data Hub」について、「EBSがなくても低コストによるデータ統合、高品質な情報というメリットを享受できる」と2月27日に説明し、顧客を他社の業務アプリケーションからEBSに乗り換えさせる武器になるとの考えを強調した。

 Customer Data HubはWebサービスを活用し、EBS以外のSAPやシーベルなどほかの業務アプリケーションを1つのデータに統合する。データベースにはOracle Database 10gを採用することが必須だが、他社の業務アプリケーションを統合して利用できるようになり、ユーザーの利便性が向上する。

 これまでは、EBSとほかの業務アプリケーションを連携させる場合、オラクルが公開しているAPIを利用し、ソフトベンダやシステムインテグレータが個別に連携のためのプログラムを開発する必要があり、開発コストがかかっていた。日本オラクルの試算では20のシステムを連携させるには190のプログラムを開発する必要があり、統合したデータを活用するデータウェアハウスなどのアプリケーションが利用されない一因になっていた。

日本オラクル 代表取締役社長 新宅正明氏。「今年は中小規模の企業にオラクルのイメージを広げたい」とコメント

 Customer Data Hubは業務アプリケーションやデータベースなどさまざまなソースに分散している顧客データを単一の顧客レポジトリに統合し、それぞれの業務アプリケーションから統合した顧客データを参照できるようにする。Customer Data Hubはデータをモデリングし、さまざまな業務アプリケーションから利用できるようにする「Oracle Data Model」と、データの参照、更新を可能にする「Oracle Customers Online」、統合された顧客データベースの作成や管理を補助するデータ品質管理ツールを提供する「Oracle Data Librarian」の3つの要素で構成される。Customer Data Hubは顧客データが対象だが、「将来的には例えば“プロダクトデータハブ”など業務に応じて別の統合ツールが登場する可能性がある」(清水氏)という。

 Customer Data HubはEBSなしでも利用可能。オラクルは業務アプリケーションで情報をうまく扱うには「EBSを入れることが一番」としてきただけに、方向転換ともいえる。ただ、Customer Data Hubを単体で使う場合でもデータベースはOracle Database 10gを利用する必要があり、EBSを売り込むための材料は残ることになる。

 日本オラクル 代表取締役社長 新宅正明氏は、Customer Data Hubの導入でグリッド・コンピューティングからデータ統合、業務アプリケーションなど企業情報を低コスト、正確に扱うことができる状況が整うとして、「企業が情報中心のアーキテクチャを実現させるためのフレームワーク“Oracle Information Architecture”(OIA)が可能になり、企業がEnterprise Architecture(EA)を実現できるようになる。今後3年くらいはオラクルはグリッドとともにOIAを推進する」と述べた。オラクルは業界別の売り込みを強化する方針で特に製造、ヘルスケア、金融向けのソリューション提供に力を入れるという。

(編集局 垣内郁栄)

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