未来はすべてはシリコンで実現する
2004/3/5
米インテルのCTO パット・ゲルシンガー氏 |
米インテルのCTO パット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏が来日した。米カリフォルニア州サンフランシスコで2月17〜19日(現地時間)の3日間にわたり開催されたIntel
Developer Forum(IDF)で最後のキーノートを担当した同氏は、インテルにおける研究開発活動全般を統括する立場にある。
現在、同社が注力する研究開発分野は大きく4つ。すなわち「プロセス・テクノロジ」「コンピューティング・プラットフォーム」「コミュニケーション」「ディスラプティブ・テクノロジ」である。これらの分野における投資額の比率はゲルシンガー氏によると「25%ずつ」だという。2004年度の同社の研究開発予算は約48億ドルと発表されていることから、それぞれに占める金額は推定できるだろう。
このうち、「プロセス・テクノロジ」は同社のビジネスの核ともいえるプロセッサ開発にかかわる。IDFでゲルシンガー氏が発表したが、つまり、プロセッサのマルチコア化がこの分野に含まれるのである。「シングルストリームでの単純なパフォーマンス向上はもはや限界にあり、マルチコア化でこれらムダな時間を減らしプロセッサ全体の利用効率をアップさせることが、パフォーマンス限界を突き破る結果につながる」のだとゲルシンガー氏はいう。
「コンピューティング・プラットフォーム」は家電(Consumer Electronics=CE)とPCの融合環境におけるプラットフォームを想定した同社の製品開発戦略である。記者からは「PCと家電は根本的にビジネスモデルが違う。その違いを克服する戦略を持っているのか」などの質問が出たが、ゲルシンガー氏はそれに対し、インテルのビジネスの基本はあくまで「シリコンを販売することだ」とし、ビジネスモデルに変化はないと印象付けた。つまり、デバイスがどう変化しようとも、IPベースのネットワークで機器間がコミュニケーションを取るという基本形態は変わらず、それらの機器の核となるシリコン・チップの存在形態がまったく違ってくることはない、という想定に基づいている。ここで、ゲルシンガー氏は、デバイスは何でも構わないという中立的な立場を取っているとはいえ、実際には「これまでのIPベースにネットワーク遺産を生かすには、PCの特性を受け継いだデバイスが主流となると考えるのが妥当ではないか」と漏らす。
ソニーがゲーム専用機を次世代のデジタル・デバイスの本流とする考え方を持つのは、その立場からして当然であろうし、CATV会社がセットトップ・ボックスをその地位に置きたがるのも当然だろう。それと同じように、インテルにとってはやはりPCが次世代のデジタル・デバイス端末の座に座る方が、極端な戦略転換を行わなくて済む。
そのほか、ゲルシンガー氏は、シリコン技術とフォトニクス(光通信)技術を組み合わせた製品に関する将来的な展望についてなどについても言及した。IDFで紹介した技術展望である。シリコン上に光を制御する回路を作り出すもので、将来実用化されれば、光速に近い形で処理を行うプロセッサの開発が可能になる技術である。
同社にとって今後のコンピューティング環境は、「すべてのデバイスが通信に関与し、それらのデバイスの通信はシリコンが実現する」という立場を貫き通すことに変わりはない。
(編集局 谷古宇浩司)
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