日本テレコム 倉重社長の肖像、「私は変化を好む経営者だ」

2004/3/9

日本テレコム 取締役 代表執行役社長 倉重英樹氏

 2月に日本テレコムの取締役 代表執行役社長に就任した倉重英樹氏が就任後初の記者会見を開催した。日本IBMの取締役副社長、PwC コンサルティングの代表取締役会長兼社長などの経験を日本テレコムの再建に注ぐ。現在の心境と2004年度の事業戦略の方向性を示した。

 記者とのやりとりは以下の通り。

――2004年度の事業戦略策定を3月末をめどに行っているとコメントしていたが、その方向性は。

倉重 ポイントは3つだ。1つ目は売上高の拡大。2つ目は顧客/個人問わず、顧客のネットワーキング・パートナーとなること。3つ目は社員が生き生きしている企業を作り上げること。最初のポイントについて、2001年にボーダフォンが日本テレコムの経営に参加し、利益重視の体質改善を行ったことは周知の通りだ。そしてそれは成功したと認識している。なので今度は、売上高の拡大を目指すことにする。とはいえ、オールラウンド・プレーヤーになるつもりはまったくない。ターゲットセグメントは明確にする。2つ目のポイントについて。今後、IPベースのネットワークはさらに社会の中に浸透していく。その結果、ネットワークをベースにしたコミュニティがたくさん生まれてくるだろう。ライフスタイルの変化、ワークスタイルの変化は当然起こってくることである。そのインフラを支え、企業、個人にさまざまな提案を行っていく。3つ目のポイントについて。2つ目のポイントを実現する企業として、日本テレコムがショーケースになる必要がある。ワークスタイルの変化に柔軟に対応し、情報がオープンに公開されている新しい企業の形を目指したい。

――任期はあるのか。またリップルウッドから今回のポストを打診された経緯について教えてほしい。

倉重 任期はない。(リップルウッドが)コンタクトしてきたのは2003年の秋ごろだったと思う。正月に決断した。通信業界は確かに厳しいと思う。だが同時に巨大なビジネスチャンスが生まれるのもこの市場だと思った。これまでとまったく違うことができるのではないかと思い、今回のポストを引き受けることにした。

――リップルウッドと倉重氏との間に、設定された数値目標はあるのか。また、今回、太平洋セメントの相談役でもある諸井虔(けん)氏をはじめ、錚々(そうそう)たる顔ぶれの社外取締役をそろえているが、彼らは倉重氏が声をかけたのか。

倉重 数値目標などは一切ない。社外取締役は私のアドバイザー的な役割を担うと思っている。私が声をかけたわけではない。以前から話は進んでいたと聞いている。

――社員を非常に大事にすると明言されていることから、人員削減などのリストラ策を断行することはない、と理解していいのか。

倉重 せっかく日本テレコムの社員であるのだから大事にはしたい。

――NTT、KDDIといった競合とサービス面でどのような差別化を図っていくのが得策だと考えているか。

倉重 IPベースの通信技術はまさに爆発的な勢いで進化してきた。1990年代の10年間で帯域幅は130倍になったといわれている。だが、その利用方法について、つまり、この強力伝送路に何を載せるか、については、日本テレコムに限らず、差別化を図ることができたとはいえないのではないかと思う。まずは、伝送路に何を載せるか、をあらためて考えなくてはならない。

――世の中にはたくさんの経営者がいるが、自分はどのような経営者だと思っているか。

倉重 変化を好む経営者だと思っている。O型なので目標がありさえすれば、それに向って猪突猛進する性格である。ビジネスにはせっかちだが、人間に対してはのんびり構えることにしている。そういう性格であり、そんな経営者だ。

(編集局 谷古宇浩司)

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