IT投資に満足している企業はたった3割、アビームが調査
2004/3/10
過去3年間に行ったIT投資について「期待通りの成果だった」と考えている国内の大手企業は3割しかない、との調査結果をアビーム コンサルティングが3月9日に発表した。「期待以上だった」と答えた企業は皆無で、「やや不十分」が過半数。企業のIT投資は若干ながら上向き傾向を見せているが、成果を上げる方法は模索が続いているようだ。
調査は2003年10月から12月にかけて東証一部上場企業とそれに準ずる大手企業1545社の経営企画部門長、IT部門長に実施。回答した企業は125社(回収率8%)だった。125社の内訳は従業員1万人以上が22%、5000人以上1万人未満が10%、3000人以上5000人未満が15%、1000人以上3000人未満が31%、1000人未満が22%。業種では製造が60%を占め、金融が12%、流通が11%、運輸・通信・サービス・エネルギーが9%、建設が7%だった。
アビーム コンサルティング アビームリサーチ ディレクター 木村公昭氏 |
調査によると過去3年間のIT投資で効果が「期待以上だった」とした企業はなく、「期待通り」でも30%だった。55%の企業が「やや不十分」と答え、「不十分」も12%を占めた。IT投資の効果に不満を持つ企業数が過半を超えた。アビーム コンサルティング アビームリサーチ ディレクター 木村公昭氏は、「多くの企業が積極的にIT投資を行いながら、投資成果は不十分というのが実態だ」と指摘した。
アビームはビジネスに関する個別の成果についても質問。IT投資が「企業収益の向上」に貢献したかという問いに対しては、60%の企業が「不十分」または「やや不十分」で、「期待通り」は16%だった。「期待以上」と答えた企業はなかった。一方で「調達コストの削減」や「間接業務の合理化」「既存顧客との関係強化」などへのIT投資の効果は、30%前後の企業が「期待通りの成果」と回答した。
IT投資全般については8割程度の企業が積極的な姿勢を示している。同業他社と比較して、自社のIT投資が「かなり積極的」「やや積極的」「同程度」と答えた企業は回答企業の85%。また、3年前と比較して、売上高に占めるIT予算の比率が上昇した、または横ばいと答えた企業は79%だった。
アビームは、業界内での企業のポジショニングによってIT投資の成功要因は異なると説明。売り上げが伸びていて業界トップ、準トップにある企業に対しては「トップを維持するために明確なプロセス優位性を確立し、現状に安住することなくプロセスの継続的改善に努める必要がある」と指摘した。売り上げは伸びているがトップ企業からは引き離されている企業に対しては、「IT部門長がトップ・マネジメント、ユーザー部門とコミュニケーションを取り、経営と一体になったIT戦略をスピーディに立案・推進できるよう環境を整えることが重要」と説明した。
また、業界トップ、準トップだが売り上げが伸び悩んでいる企業に対しては「必要な変革とITの導入を全社的な視点から率いるCIOとIT企画推進組織を設置し、一貫した投資決定と実行で、コスト最適を実現する」と指摘した。IT予算を割くことが最も難しいと思われる、売り上げが伸び悩み業界トップに引き離された企業に対しては、「属人的、慣習的、定性的な判断を排して、IT投資の成果を測定可能な目標・指標を設定。限られたIT予算の中で必要な投資を行って事後評価を行うとともに指標自体も評価し、改善することが重要」と述べた。
木村氏はIT投資を成功させるポイントとして「CIOの設置などIT投資を“点”として考えるのではなく、プロセスとして“Plan-Do-See”のサイクルを回すことが重要。IT投資のポイントは企業のポジショニングや企業風土によって異なる。IT投資を実行するプロセスの中で何が重要かを見極めることが大切だ」と述べた。
(編集局 垣内郁栄)
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