マーク・アンドリーセン氏とユーティリティ・コンピューティングの未来

2004/4/9

米オプスウェア 会長 マーク・アンドリーセン氏

 世界初の汎用型Webブラウザ「モザイク」の開発者で、現在は米オプスウェアの会長であるマーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)氏が4月8日、NTTコミュニケーションズが主催するセミナー「BIZ-VISION 2004」で基調講演を行った。現在アンドリーセン氏はオプスウェアで、データセンターのサーバ・プロビジョニングなどを自動化するソフトウェア技術を顧客に提供している。「Grid」「Utility Computing」「On demand」というキーワードに象徴される次世代コンピューティング環境の構築作業が、現在の同氏にとっての主な活動領域なのである。今回来日したのは、NTTコミュニケーションズと米EDS(およびEDSジャパン)の提携による新ホスティングサービス「AGILIT」(アジリット)に、オプスウェアが技術を提供しているという背景があるため。

 基調講演の冒頭でアンドリーセン氏は、さまざまな調査会社の資料を駆使しながら、インターネット環境の広がりを示した。例えば、米ニールセンと米ネットレイティングス、米モルガン・スタンレーの共同調査結果を引きながら、「1995年当時と比較すると、2003年のインターネットユーザー数は6倍に拡大している」、また米メリルリンチのデータを参照し、「全世界のブロードバンド加入者は2003年で約8700万人に達する」、さらに、米IDCの調査レポートから「2003年、全世界で電子メールは6兆8000億通(スパムなどはのぞく)も交わされた」など。また、米モルガン・スタンレーによるキーワード検索広告市場規模のデータも引用した。同市場の規模は、2001年では2億8500万ドルだったのが、2002年には9億ドルを突破する急成長を遂げた。

 これらのデータが示すのは「インターネット市場は成長と進化を続けながらいまに至り、今後もさらに拡大していくことは間違いがない。しかし、このようないいニュースばかりとは限らない」(アンドリーセン氏)ということだ。「クライアント/サーバからWebベースにITプラットフォームのトレンドが移行し、システムそのものが複雑かつ巨大になった結果、『コスト』『セキュリティ』『品質』の3つの面でわれわれは深刻な問題を抱え込むことになった」とアンドリーセン氏は指摘する。つまり、IT投資の75%は現行のシステムの運用・管理に費やされている(米ガートナー、2002年)こと、コンピュータ・ウイルスの被害は1999年と比較して15倍にも拡大していること(米CERT)、99.5%の実稼働を実現しているアプリケーションは全体の20%にも満たない(米ガートナー、2003年)のである。

 このような状況を打開する解決策の1つがまさに、現在アンドリーセン氏が携わるビジネスであるというロジックだ。そして、NTTコミュニケーションズのデータセンター基盤やセキュリティ技術、米EDS、EDSジャパンの標準化された運用プロセスやノウハウ、そしてオプスウェアのITオートメーションソフトウェア技術を組み合わせて提供する新たなホスティング・サービス「AGILIT」が、その解答の具現化であるとアンドリーセン氏は紹介したのだった。

(編集局 谷古宇浩司)

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