組み込みLinuxのEclipse的ソリューション
2004/4/22
米ウインドリバーの社長兼CEO ケン・クライン氏 |
米ウインドリバーの社長兼CEO ケン・クライン(Ken Klein)氏が来日し、4月21日に記者発表を行った。組み込みOSの「VxWorks」を起点に特定マーケット向けミドルウェアや統合開発環境(IDE)を開発・販売する同社は、「DSO」(Device Software Optimization:スマートデバイス搭載ソフトウェアの最適化)と呼ばれる事業ビジョンを掲げている。
クライン氏は、「デジタルカメラ、携帯電話、IT家電、自動車などあらゆる業種において、組み込みソフトウェアによる商品の差別化が急速に進んでいる。組み込みの世界では従来、限られたリソースで目的の機能を満たせばよく、性能の差別化は重要視されてこなかったが、今後はより戦略的な性能強化を迫られることになる」という見解を示し、組み込みソフトウェア開発者は「開発の効率化」「信頼性や安全性の向上」「コスト削減」という厳しい要求に直面すると語った。
一方で、「コーディング量は従来なら1万ステップだったものが、最近では10万〜100万ステップにもおよぶ」(クライン氏)といわれるほど、ソフトウェアは複雑化の一途をたどっている。エンタープライズ系開発と同じことが、組み込み開発現場でも起こっているわけだ。これに対するウインドリバーのソリューションは、やはりエンタープライズの世界と同様、「標準化」と「開発ツール」である。
Linuxを組み込みOSに採用する潮流は、開発効率とコスト削減という市場ニーズを反映したもの。リアルタイム性能やメモリプロテクションなど組み込みOSとしての性能を犠牲にしても、開発者スキルの標準化による恩恵に重きを置いた選択肢として、組み込みLinuxへの期待が高まっている。またLinux上で稼働する豊富なアプリケーション群を利用できることも見逃せない。クライン氏は組み込みLinuxの市場性について「サードパーティのアプリケーションへのアクセス、あるいはプロセスベースのアクセスが必要になる案件で、組み込みLinuxが伸びるだろう」と語った。
市場拡大が見込まれる組み込みソフトウェア開発市場だが、エンジニア不足が深刻な問題となりつつある。Linuxのような標準化されたOSの採用は、エンジニアの確保やノウハウ再利用に効果的だ。同社の提供する統合開発環境「Wind River Workbench 2.0」(旧名称、Wind Power IDE 2.0)はEclipseベースで、VxWorksとLinuxの開発をサポート、ITRONにも対応予定という。異なるOSや開発言語でも同一のツールで開発できる点をアピールし、開発者の囲い込みを進める狙いがある。
さらに同社は、Linuxディストリビュータ大手、レッドハットと共同で組み込みLinux専用ディストリビューションを開発中で、これがリリースされれば、VxWorksで築いた「OS、ツール、ミドルウェアの3点セット」でがっちり市場を刈り取るビジネスモデルが、組み込みLinux市場でも実現することになるだろう。
(編集局 上島康夫)
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