意外に知られていないEclipseに対するIBMの貢献

2004/4/14

 1999年、OTIとIBMの共同プロジェクトによって、Eclipseは産声をあげた。その後の躍進ぶりは周知の通り。現在、IT業界のさまざまな企業がEclipseの影響を受けている。生みの親IBMも例外ではない。しかし、IBMがEclipseに対してどのような姿勢で臨んでいるのか、その状況は意外と知られていない。「UML FORUM / Tokyo 2004」(主催:オブジェクトテクノロジー研究所、4月13日~14日開催)で講演した日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 ラショナル事業部 SDPエバンジェリスト 渡辺隆氏は、IBMが(ラショナルソフトウェアを吸収することで)新たに手に入れたソフトウェア開発ビジネスの側面から、IBMとEclipseの関係について明らかにした。

 IBM Rationalが行うEclipseプロジェクトへの貢献は大きく4つある。

    「EMF(Eclipse Modeling Framework)の策定」
    「UML2の策定」
    「CDT(C/C++ Development Tools)の開発」
    「テストやトレース、監視のための統合インフラ“Hyades”の開発」

 EMFとは、モデリングのフレームワークとコードの生成機能をEclipseに実装する技術。UML2は、EMFをベースとしたUML2.0メタモデルの実装技術である。現在、EMFが「実装されているのはWebSphere Studio Application Developerのみ」(渡辺氏)だという。

日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 ラショナル事業部 SDPエバンジェリスト 渡辺隆氏

 同社のWebSphere Studioファミリーは、基盤技術としてEclipseを採用している。IBMは明らかにEclipseがソフトウェアの統合開発環境としてさらに普及し、あらゆる開発ツールの基盤にまで進化すると見込んでいるようだ。

 IBM Rationalブランドの製品、例えば「XDE(モデリング環境)」や「Functional Tester for Java and Web(機能テスト)」「ClearCase(構成管理)」「ClearQuest(変更依頼管理)」は、すべてEclipseおよびWebSphere Studioから起動可能となっている。つまり、IBMのソフトウェア開発ツールは、すべてがEclipseを基盤に統合されているといってもよい。UML2.0のメタモデルを始めとしたソフトウェア開発における新たな技術の実装もEclipseを介してWebSphere Studio(およびIBM Rationalブランド製品)に取り込む流れを確立している。

 開発ツールの環境を整えると同時にIBMは、モデル駆動型開発(MDD)の確立にも力を入れている。「ソフトウェアの成果物を自動的に統合、生成、近代化、可視化、再利用するための戦略的なイニシアティブ」(渡辺氏)というのがその定義で、OMGが策定するMDA(モデル駆動型アーキテクチャ)と基本的な思想は同じだが、その考えをさらに拡張している。つまり、MDAはプラットフォームに依存しないモデルを規定することで、ソフトウェア開発の効率性を追及しようとするアプローチを採るが、MDDは「コンピュータ化独立モデル(CIM)」という概念を導入し、さらにモデルの抽象度を高めようとしている。

 「ソフトウェア開発の歴史は、抽象化と生産性向上を目指す努力の歴史にほかならない」と渡辺氏はいう。少なくともEclipseは、その歴史の重要なモジュールとなっていることは間違いない。

(編集局 谷古宇浩司)

[関連リンク]
日本IBM
オブジェクトテクノロジー研究所

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