組み込みLinuxへ舵を切るウインドリバー

2004/3/24

 VxWorksを販売する組み込みOSベンダ、ウインドリバーは3月23日、第2回プレスセッションを開き、同社の組み込みLinuxへの取り組みについて発表した。組み込みデバイス向けの独自OSと開発環境で地歩を固めてきた同社だが、昨今の組み込みLinuxへの追い風を受け、2003年10月よりLinux対応を開始している。今回はエンタープライズ向けのLinuxディストリビューション大手、レッドハットとの提携やEclipseベースの開発ツールなど、2月24日に発表された内容の説明が主だった。

ウインドリバー代表取締役社長 藤吉実知和氏

 組み込みLinux市場について、同社代表取締役社長 藤吉実知和氏は「現時点で、市場と呼べるほどの規模に育ってはいない。政府の後押しもあって、業界団体がなんとかLinuxを家電製品に普及させようと2年間活動してきたが、これといった製品が出なかった。一部の経営者には、もうLinuxはこりごり、といった風潮も出ている」と語り、組み込みLinuxへの過度の期待と、その揺り戻しが起こっている点を指摘した。藤吉氏は「Linuxを無理にコンシューマ製品に押し込もうとするのは無理がある。だからといって、組み込みLinuxを全否定するのは早計だ。今後、多くの家電製品がネットワークにつながってくる。家電自体は性能を重視した従来型の組み込み専用OSに任せ、それらをネットワーク的に管理するデバイスといった、Linux本来の特性を生かせる方向を模索するべきだろう」と述べた。

 同社の調査によれば、組み込み機器開発で使用されている(もしくは計画中の)Linuxディストリビューションのシェアは上位から、Red Hat25%、Monta Vista17%、自社製14%、非商用LinuxおよびMetrowerksが10%ずつと続く。このうち組み込みLinux専用ディストリビューション(Monta VistaとMetrowerks)以外のシェアが49%を占める。同社はこの状況を踏まえ、レッドハットとの提携を選んだという。現在、共同開発センターを設置して新たな組み込みLinuxディストリビューションを開発中だが、リリース時期は明言しなかった。

 同社の統合開発環境「Tornado」は、5月リリース予定の次期バージョン「Wind Power IDE 2」に置き換わる。これは、Java開発環境でデファクトとなったEclipseをベースとしたもの。VxWorksとLinuxのどちらの開発にも使用できるツールで、今後増加するであろうLinuxと専用OSの混在した開発に対応した製品となる。

 組み込みLinuxへの対応を進める同社は、さらに無償OSに対応したライセンスモデルも発表した。従来、組み込みOSは開発ライセンスに加え製品出荷数に対して課金していたが、Linuxなど無償OSでは製品ライセンスはなじまない。このようなケースに対しては、開発ライセンスを増額する代わりに、製品ライセンスを無償とするもの。オープンソースの普及に伴って、他社でもこのような新しいライセンス形態が増えるのではないだろうか。

(編集局 上島康夫)

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