IPAが新センター設立、組み込みソフトの品質向上を目指す

2004/4/28

 情報処理推進機構(IPA)は4月27日、中期目標実現に向けたIPAの事業運営のポイントを発表した。また、2003年中の「国内・海外におけるコンピュータウイルス被害状況調査」の結果も公開した。

IPA 基盤ソフトウェア開発部長 佐伯俊則氏

 IPAは、ソフトウェアの生産性・信頼性の向上を目的とした「ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)」を10月ごろに設立する。IPAでは、学会や産業界関係者を交えた研究会や、外部シンクタンクによるSEC設立に関するフィージビリティスタディを実施、活動計画の枠組みを策定していく予定だ。また、ドイツの「フラウンホーファ 実験的ソフトウェアエンジニアリング研究所」(IESE)や、米カーネギーメロン大学の「ソフトウェアエンジニアリング研究所」(SEI)との協力関係を強化する。

 IPA 基盤ソフトウェア開発部長 佐伯俊則氏は「ソフトウェアの社会に与える影響が大きくなってきている。この結果、品質の向上が非常に重要になった」と語る。SECではまず、先進的ソフトウェア開発のベストプラクティス作りを目指す。具体的な施策として、ソフトウェアエンジニアリング手法の効果に関する実証実験、新たな手法の開発、高度IT人材の実践的教育などを行う。経済産業省が推進するITスキル標準(ITSS)に、今秋にも組み込み分野が追加される予定となっており、IPAではその分野の公開と普及を図る。

 また、日本の製造業の強みをさらに強化するため、自動車車載機器や携帯端末といった組み込み分野に特化した開発力の強化やスキル標準を策定する。そのほか、エンタープライズ系ソフトウェアの品質・生産性向上に向け、ユーザーやベンダからの定量データや事例の収集・分析を行い、標準仕様の策定やソフトウェア定量化の促進を行う。この結果、人月や根拠の曖昧な価格やブランドではなく、高品質・高生産性によって評価を得られる競争環境の構築を目指す。

IPA セキュリティセンター センター長の早貸淳子氏

 一方、コンピュータウイルス被害状況調査によると、2003年には70%の企業・自治体でウイルスに遭遇した経験があることがわかった。このうち39.8%の企業・自治体において5種類以上のウイルスに遭遇している。感染経路については、電子メールが51.9%ともっとも多く、ついで外部媒体や持ち込みパソコンが15.8%となっている。この数値は米国、ドイツ、韓国、台湾、オーストラリアと比較してダントツに高い。各国は5%未満だ。

 IPA セキュリティセンター センター長の早貸淳子氏は、「持ち込みパソコンによる感染の多くはMSBlasterによるものと推測できる。大企業になるほど、ゲートウェイレベルのアンチウイルス対策を採用しており、クライアントPCレベルのウイルス対策に対して脇が甘かったのではないか」とコメントしている。なお、IPAの試算によれば、2002年のウイルスによる国内被害総額は約4400億円。2003年は約3025億円で、金額だけみれば減少している。これは2002年に流行したKlezなどにより、企業の対策が進んだからだとIPAは推測している。

(編集局 岡田大助)

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