課題は運用面、ENUM推進団体が中間報告

2004/5/13

 電話番号と、インターネットのURLや電子メールアドレス、IP電話のSIPアドレスをひも付けし、電話番号からさまざまなインターネットのアプリケーションを統一的に利用できるようにする情報基盤の新技術「ENUM」(イーナム)の実証実験を行っている「ENUMトライアルジャパン」(ETJP)は5月12日、研究の中間報告を行った。ETJP会長を務める早稲田大学理工学部教授の後藤滋樹氏は「ETJPはさまざまな活動があり、中間報告としてまとめるのは意義深い」と述べた。

ETJP会長を務める早稲田大学理工学部教授の後藤滋樹氏

 ENUMはDNSの仕組みを活用する。「+81-3-1234-5678」など国際的に利用される電話番号形式「E.164番号」に、URLや電子メールアドレス、IP電話のSIPアドレスを対応させる。アプリケーションに電話番号を入力すると、DNSにアクセスし、電話番号に対応するURL、電子メールアドレス、IP電話のSIPアドレスなどを取得。相手の状態や時間、優先順位に応じて適切なアプリケーションで相手にアクセスする、などの使い方もある。また、IP電話から電話をかけた場合に、相手がIP電話ならSIPアドレスを取得、一般の電話ならSIPゲートウェイのアドレスを取得し、公衆網を通じて一般電話に接続する、という使い方も考えられている。

 ENUMは、IPアドレスが登録されているDNSの登録情報に電話番号やURL、電子メールアドレスを追加登録するだけでシステムを構築でき、技術的な課題はある程度解決されているという。ETJPのDNSワーキンググループでは、日本レジストリサービスの藤原和典氏が報告を行い、ENUMで利用するDNSの技術的な要件を明らかにした。DNSワーキンググループでは現在の電話契約数などからENUMが全国で運用開始された場合、ENUM DNSには最大2億件の情報が登録されると予測。また、ENUM DNSは1秒間で5万件の問い合わせに対応できるだけのパフォーマンスが必要になると説明した。DNSの更新頻度は携帯電話の電話番号データの更新と同じ程度の30分に1度を想定している。DNSワーキンググループでは実際にDNSサーバを構築し、パフォーマンスの測定を行う計画で、2004年9月までに結果を発表する。

 ENUMでは電話番号をトリガーにしてさまざまな情報を取得できることを目指す。明確な運用ルールがないと、電話番号を公開しただけで電子メールアドレスなどユーザーが望まない情報が公開され、スパム業者などに悪用される懸念がある。このようなプライバシー問題を検討するためETJPにはプライバシー&セキュリティワーキングループも設けられているが、同ワーキングループからは目立った発表はなかった。6月までにENUMでの情報の取り扱いを定めたガイドラインを公開する予定だという。

 中間報告会ではENUMの仕組みを使ってシンガポールに国際電話をかけたり、さまざまなアプリケーションを起動するデモンストレーションが行われ、ENUMの有効性がアピールされた。

(編集局 垣内郁栄)

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ENUMトライアルジャパン

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