トレンドとシスコの大型提携で「技術者のやる気がアップ」
2004/6/10
トレンドマイクロとシスコシステムズは、コンピュータ・ウイルス対策技術の共同提供で提携すると6月7日に発表した。トレンドマイクロのウイルス対策技術をシスコのルータやスイッチに搭載するのが提携の主な内容。トレンドマイクロの代表取締役社長兼CEO スティーブ・チャン(Steve Chang)氏は「シスコはトレンドマイクロのネットワーク・ウイルスへの取り組みを評価した」と述べたうえで、「大手のシスコと提携したことはトレンドマイクロの売り上げの向上だけでなく、エンジニアの自信につながり、モチベーションも上がる」と話し、提携を歓迎した。
トレンドマイクロの代表取締役社長兼CEO スティーブ・チャン氏 |
提携では「Sasser」などのネットワーク・ウイルスを防御する技術をシスコのIOS搭載ルータやCatalystスイッチ、セキュリティ・アプライアンスに組み込む。さらにトレンドマイクロはセキュリティ関連サービスの技術もシスコにライセンスする。ライセンスするのは、セキュリティホールが放置されたクライアントPCを検知してネットワークから排除する「脆弱性診断」と、ウイルス定義ファイルの配布前に、未知のウイルスを検知してポリシーベースで攻撃をブロックする「大規模感染予防」、ウイルスに感染したシステムを自動で診断し、修復する「感染復旧」の各技術。
シスコは、トレンドマイクロのウイルス対策技術を2004年第3四半期にもルータ、スイッチ、アプライアンスに組み込む予定。「Cisco IDS」のバージョン4.1を搭載した製品が対象。「大規模感染予防」などトレンドマイクロのほかのウイルス関連技術の組み込みも2005年には開始する。
トレンドマイクロは、シスコが提唱する自己防衛型ネットワーク実現のためのプログラム「Cisco ネットワーク・アドミッション・コントロール」(NAC)に対応した製品を2004年5月に発表するなど、すでにシスコと提携関係にある。だが、NACにはシマンテックなどほかのセキュリティベンダも参加していて、シスコとの関係は特別とはいえなかった。今回の発表は、その提携関係を一歩進めて他社に先んじる内容といえる。
チャン氏はシスコがトレンドマイクロとの提携を強化した理由として「トレンドマイクロが他社に先んじて18カ月前からネットワーク・ウイルスへの取り組みを行ってきたことが評価された」と説明した。シスコに対して「トレンドマイクロと組めばハード、ソフト、サービスでネットワーク・ウイルスをブロックできると説き続けてきた」という。シマンテックなどほかのセキュリティベンダは、ウイルス対策技術のほかにさまざまなセキュリティ技術を持つため、シスコと部分的に競合する可能性がある。協業を避けるためにシスコがウイルス対策専業のトレンドマイクロを選んだという面もあるようだ。
一方、トレンドマイクロもシスコ以外にノキア、ネットスクリーンなどと協業し、お互いの技術を組み込んだアプライアンスを発表している。だが、チャン氏は「ノキア、ネットスクリーンとの提携はファイルベースのウイルスをブロックするゲートウェイ技術が対象。シスコとはネットワーク・ウイルスのブロックが対象。解決するウイルスの種類が違う」と説明し、影響を与えることはないとの認識を示した。また、「シスコとの提携はExclusive。シスコは唯一トレンドマイクロを選んでくれた。両社にとって提携の意味は大きい」と述べ、ネットワーク・ウイルスを防御する技術をシスコ以外のネットワークベンダに当面は提供する考えはないことを強調した。
チャン氏はまたネットワーク・ウイルス以外のシスコとの協力関係について、無線LANアクセスポイントの保護などネットワークのエッジ部分のセキュリティ技術がシスコ製品に組み込まれる可能性があると説明した。
(編集局 垣内郁栄)
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トレンドマイクロの発表資料
シスコシステムズの発表資料
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