業務ソフトかERPか、それが問題だ

2004/6/18

(左から)SAP AG 会長兼CEO ヘニング・カガーマン氏、同 グローバル・フィールド・オペレーションズ 最高責任者 レオ・アポテカー氏、SAP ジャパン 代表取締役社長 藤井清孝氏

 SAP ジャパンは6月17日、中小企業向けERPの新製品「SAP Business One」を出荷すると発表した。「SAP Business One」はSAPの中小市場向け製品(「mySAP ERP」「mySAP All-in-One」)の1つで、欧米ではすでに25カ国2500社以上の導入実績を持つ。日本国内では従業員数200人以下の中小企業を対象としている。

 直接販売主体、重厚長大型のビジネスを展開していたSAPが最近は中小企業市場に積極的に食指を伸ばしている。ERPの主な顧客は製造業が中心だったが、最近は需要が一巡、サービス業を中心とする非製造業にターゲットを拡大する必要が生まれてきた。サービス業の多くは(製造業と比較して)企業規模が小さいという特徴がある。

 「SAP Business One」が提供するアプリケーションは「会計」「販売」「購買」「在庫」「銀行」「生産」「HR管理」「レポート」「システム管理」「そのほかのツール」など。これは企業の基幹業務を支援するための“最小構成”であり、技術的に複雑なカスタマイズを行うためには開発キット(SDK)が用意されている。このSDKには「データインターフェイス・アプリケーションプログラミングインターフェイス」(DI-API)と「ユーザーインターフェイス・アプリケーションプログラミングインターフェイス」(UI-API)という2つのAPIが組み込まれている。これらのAPIはCOM(Component Object Model)テクノロジをベースとしており、使用可能なCOMオブジェクトは、Visual Basic、C/C++、Javaで編集可能。アプリケーションはシングルサーバ上にあり、WindowsNT系ネットワークにシームレスに統合できる。対応プラットフォームはサーバ、クライアントともにWindowsであり、ターゲットとする企業がWindowsサーバを導入しているということを前提としている。Win32ベースの2層のクライアント/サーバアーキテクチャを採用している。

 「SAP Business One」を国内で販売するにあたり、SAP ジャパンにとっては初のパートナー企業による間接販売を採用する。すでに、アイ・ティ・フロンティアや日本IBM、NECネクサソリューションズを始めとした13社と販売契約を結んでおり、2004年度中に20社にまで拡大する予定。また、2004年度内に700社以上の受注を目指す。

 「SAP Business One」のシステム要件をみると、プラットフォームがWindowsに限定されていることがわかる。この製品は特に日本向けに開発されたものではないが、日本の中小企業はWindowsプラットフォームをベースとした“業務ソフト市場”という一種独特の市場が存在していることから、「SAP Business One」の登場でこの市場に少なからず影響があると予測できる。10ユーザー280万円からという価格体系も非常に戦略的である。

(編集局 谷古宇浩司)

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