変更管理で世界ナンバー1を目指す
2004/7/7
変更管理ツールの「PVCS」といえば、@IT読者なら知っている人も多いだろう。現在では「Merant Professional」として発売されているのは、メラントの製品だ。同社は世界第2位(マーケットシェア)の変更管理ツールベンダだが、それを2004年5月に買収したのがセレナ・ソフトウェア。同社は世界第3位の変更管理ツールベンダだが、メラントの買収により世界第2位に躍り出て、従来圧倒的な差があったIBM(ラショナル)の背中が見えるまでになった。
セレナ・ソフトウェア アジアパシフィック地域バイスプレジデント デービッド・パーカー氏 |
実際、セレナのアジアパシフィック地域バイスプレジデント デービッド・パーカー(David Parker)氏は、「2004年後半までにはIBMを抜き去って1位になると確信している」と宣言した。
今回の買収によってセレナは、自社のメインフレーム環境に強い変更管理ツール、ITプロセス管理ツールなどのほか、メラントのオープン環境に強い変更管理ツール、メラントのWebコンテンツ管理ツールなどを得て、不足していた製品を補完することができた。
しかし、セレナが手に入れたのは、そうした製品/ソリューションの補完やシナジー効果だけではない。セレナは「欧米に強いが、日本や中国を含めアジアの拠点がなかった」と語ったセレナ・ソフトウェア日本支社(現在社名はメラントだが、近く社名変更の予定) 支社長 吉原邦夫氏の言葉からも分かるとおり、今後急速に市場が伸びると見ている中国や、ある程度の規模を持つ日本市場、さらにはアジアへの市場アクセスを得ることができたわけだ。
日本ではMerant Professionalを活用しているユーザーの70%は、組み込みソフト開発の変更管理に使われているという。従来の使い方の中心であったアプリケーションソフトの開発管理は20%程度。それ以外はCMMなどの認定などのために導入している企業が10%程度だという。吉原氏は「Merant Professionalが変更管理のデファクトだ」と述べたうえで、「例えば皆さんがお使いの携帯電話のほとんどは、Merant Professionalで変更管理されている」と語り、製品のシェアと用途の広がりを強調した。
開発における変更管理の重要性はいまさら強調するまでもない。しかし、今後のトレンドはどこへ向かうのだろうか。
パーカー氏は、IDCの調査結果から、予期しないアプリケーションのダウンタイムは、40%はアプリケーションの失敗、バグ、20%はテクノロジの失敗、40%がオペレータのエラーによるといったことが原因だったとする。しかし、同調査によれば、チーム間の協業、ITプロセスの改善によって、そのうち80%は解消、あるいは削減できる、としている。さらに企業がこの問題を本当に解決したいのであれば、変更管理のプロセスをアプリケーション開発だけではなく、ITのオペレーションまでにも広げることが重要だという。
そうしたことを踏まえパーカー氏は、「競合他社はソフトの構成管理(Configuration Management)といった言葉を使う。彼らはあくまでモデリング、要件管理、構成管理、ディプロイ、テストといったような、ソフト開発の部分だけをいっている。しかし、セレナはインフラストラクチャ、ソフト開発、さらにはコンテンツマネジメントなどの分野までの変更管理を実現している。つまり『エンタープライズ変更管理(Enterprise Change Management)』を実現しているのだ」と述べ、自社の優位性を訴えた。
エンタープライズ変更管理を実現するためのキーワードが、SAFE(Serena Application Framework for Enterprises)だ。SAFEを簡単に説明すれば、アプリケーションライフサイクル管理のためのフレームワークである。その上にさまざまな製品群を配置し、プロセス間を自動化する。その中枢製品となるのが、今年8月に2バイト対応を、今年末までに日本語版を発表したいとセレナが意気込む、Webベースのプロセス管理ツールの「Serena TeamTrack」だ。プロジェクト依頼から顧客サポートまでのアプリケーションライフサイクル全体にわたる明確なプロセスを作成し、管理できる。なお、Merant Professionalは「Serena Professional」に名称が変更され、同製品に搭載されていた「Tracker」をSerena TeamTrackに入れ替える予定という。
最後に、UMLなどのモデリングツール分野に進出する気はないのか。それについてパーカー氏は明確に否定した。「われわれはメソドロジーやモデリングツールなどを手掛けるつもりはない。どんな企業であってもメソドロジーやプロセスは、どんな企業でも持つべきである。それがCMMIやITILなどに準拠しておくべきだとは確信しているが、それがUMLかどうかについては興味がない」
(編集局 大内隆良)
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