モータースポーツを512倍楽しむ方法

2004/8/7

 レジャーシートにポンチョ、場内FM放送を聴くためのFMラジオとオペラグラス。空気で膨らませる座布団も捨てがたい。これらは、モータースポーツ観戦の必需品である。これからは、これに無線LANを装備したPCやPDAが加わることになりそうだ。「ツインリンクもてぎ」(栃木県茂木市)で提供されている「Pit Live TV powered by Intel」(以下Pit Live)にはそれだけの魅力がある。

 Pit Liveは、サーキット各所に設置されたカメラからのレース映像やタイミングモニター(順位・ラップタイムなど)を、無線LANを使ってほぼリアルタイムに配信するシステムである。無線LAN(IEEE.802.11b/g)を搭載したPC(Windows XP)、Pocket PC 2003、Zaurus Player搭載のZaurusさえあれば、無料でPit Liveを利用できる。

Pit Liveは、ライブ映像とタイミングモニターを同時に配信できる

 サーキットでは、視界外の情報を得るのが難しいという問題がある。コントロールタワーの順位表示はサーキットのどこからでも見えるわけではないし、カーナンバーのみの表示なので分かりにくい。場内FM放送による実況も、目の前を車が走っているときはエンジン音で聞き取れないことも多い。Pit Liveを利用すれば、ドライバー名付きで順位を常に確認できるし、見えない場所で起こったコースアウトやピット作業の様子も手元のディスプレイで見ることが可能なのだ。

 レース映像の配信レートは約500kbit/sと約250kbit/sの2種類。タイミングモニターは約150kbit/s。Windows Media Playerは2つ同時には表示できないため、レース映像とタイミングモニターを同時に見たい場合は、タイミングモニター用にOKI Media Playerをインストールしておく必要がある。Windows Media Playerでもタイミングモニターを表示することは可能だが、OKI Media Playerに比べて表示クオリティが低く、ドライバー名はほとんど判読不可能だった(OKI Media Playerは問題ない)。

 このPit Liveは、2004年4月16〜17日に開催された「INDY JAPAN 300mile」からすでに実戦投入されているのだが、2004年8月4日のJGTC合同テストを機に、あらためてその概要が報道関係者に公開された。

 Pit Liveは、マルチキャスト方式でデータを配信している。これにより、より広い範囲にわたって、(ユニキャストよりは)少ないアンテナ数で多くのユーザー(理論上、1アンテナで500端末)への配信を実現している。サービスエリアは、スーパースピードウェイ(オーバルコース)のバックストレートを除いたほぼ全域と、ロードコースのV字コーナーおよび90度コーナー付近をカバーしている。逆に、マルチキャストにはユニキャストに対して、

  • エラー補正(データ再送)ができない
  • 通信速度の制約(11b/gでは最大1Mbit/s)

といったデメリットがあるが、Pit Liveでは高信頼モードを利用することでデータ品質の維持を図っているほか、アクセスポイントに利用している「Cisco Aironet 1200」を改造して最大2Mbit/sに帯域を拡張している。

改造されて2Mbit/sでのマルチキャスト配信を実現している「Cisco Aironet 1200」。これがサーキットの各所に設置されている

 グランドスタンド最上階の放送室には、Pit Liveを支えているサーバが設置されている。レース映像/タイミングモニター配信サーバ、ストレージサーバはXeonマシン、Web/DNS/DHCPサーバにはItanium 2マシンが使われている。現状では、「Itanium 2マシンにはかなりの余裕がある」(ツインリンクもてぎ 営業部 本間公康氏)のだが、将来的な拡張をにらんであえてItanium 2を選択したという。

放送室に設置されているサーバ。奥にさらにサーバがある

 サーバとアクセスポイントは基本的にVDSLで接続されているが、V字コーナーや90度コーナーなど、メインスタンドから距離がある場所とは、WIPAS(Wireless IP Access System)で接続している。WIPASは26GHz帯を使用したワイヤレスIPネットワークシステムで、帯域は最大80Mbit/s。サーキットのような環境に最適なシステムといえるだろう。

グランドスタンド屋上に設置されているWIPASのアンテナ

 年に何度かサーキットに足を運ぶ身としては、タイミングモニターだけでもかなり魅力的なサービスだが、今後はさらに映像の高画質化や多チャンネル化といったサービス拡充を予定しているという。

 ちなみに、関係者の話によれば、Pit Liveのツインリンクもてぎ以外への展開も検討されているという。鈴鹿サーキットや富士スピードウェイでもPit Liveを利用できる日がくるかもしれない。

[関連リンク]
インテル
ツインリンクもてぎ
Pit Live TV powered by Intel

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