ガートナー調査で崩れた“CIO幻想”

2004/8/19

 「IT投資で期待どおりの効果を挙げた企業は6.6%」。民間調査会社のガートナー ジャパンが行った調査で驚くべき結果が出た。ガートナーはIT投資を効果的にビジネスに生かすには、経営者がITの経営戦略上の重要性を理解したうえで「経営戦略の1つとしてIT戦略を捉えるべき」と提言している。

 調査は国内の中小規模企業、大企業のIT部門管理者に実施。有効回答企業数は1087社。2004年4月12日から5月25日に行った。

 これまで行ったIT投資の効果について「期待どおり」と答えた企業は全体の6.6%。「期待以上の成功」とした企業は0.6%でIT投資で効果を出すことの困難さが浮き彫りになった。一方、61.8%の企業は「ある程度は成功」と回答。「どちらでもない」が23%あり、ガートナーでは「全体としてはそれなりの効果を挙げたと答えた企業が多いものの、それらの企業が得た効果は期待値よりも低かったということ」と分析している。「どちらかというと失敗」と答えた企業は5.1%、「失敗したシステムが多い」は1.8%で目立った回答数とはならなかった。「完全に失敗した」と答えた企業はなかった。

 ガートナーはさらにIT投資で期待どおりの成功を挙げていると答えた企業と、成功でないと答えた企業のITの運用体制について質問。IT投資に対して「期待どおりの成功/期待以上の成功」と答えた企業では、そのうちの60%以上の企業が「経営陣はITの重要性を十分理解している」と回答しているのに対して、「(IT投資の効果は成功でも失敗でも)どちらでもない」と答えた企業では、その回答率が20%程度に落ち込む結果となった。IT投資が「分からない/失敗」と答えた企業では10%程度だった。

 ガートナーはIT投資で確実に効果を挙げるための条件として経営者の積極的な関与が不可欠と指摘したうえで、「IT戦略を経営戦略の1つとして考えるべき」「経営目標達成のために組織全体でITを利用する体制を整えることが必要」「ITの導入効果を継続的に測定することも必要」などと提言している。

 一方、調査は“CIO幻想の崩壊”ともいえる結果を示した。CIOの設置は企業をIT化する上での象徴的な取り組みともいえ、ITを経営に生かそうとする企業の多くがCIOを設置している。そこからCIOを設置すればITを効果的に利用できるという“幻想”が生まれていた。しかし、調査ではIT投資の効果について「期待どおり/期待以上の成功」と回答した企業と「(成功でも失敗でも)どちらでもない」と答えた企業のCIO設置比率は、どちらも10%前後で大きな差がなかった。CIO設置の有無がIT投資の成功にほとんど影響を与えていないことを示す結果で、ガートナーは「多くの日本企業におけるCIOの役割は、ガートナーが提唱する理想的な役割とは大きく違う可能性がある」と分析している。

(編集局 垣内郁栄)

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ガートナー ジャパン

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