シスコの下に集結したセキュリティベンダ3社のトップ
2004/8/25
シスコシステムズはアンチウイルスソフトの定義ファイルがアップデートされていないなど、セキュリティポリシーに適合しないコンピュータのネットワークアクセスを拒否するエンドポイント保護の新技術「Cisco Network Admission Control」(NAC)の提供を開始したと発表した。合わせてシマンテック、トレンドマイクロ、マカフィーのセキュリティベンダ3社が製品のNAC対応を発表した。シスコシステムズの代表取締役社長 黒澤保樹氏は「今日のセキュリティ対策は全般的なアプローチが必要。とても1社では無理で各社の協力が必要だ」と述べ、セキュリティベンダとのパートナーシップの重要性を強調した。
写真左からシマンテック 代表取締役社長 杉山隆弘氏、シスコシステムズ 代表取締役社長 黒澤保樹氏、トレンドマイクロ 執行役員 日本代表 大三川彰彦氏、マカフィー 代表取締役社長 加藤孝博氏。セキュリティベンダ3社は競合だが、意外に仲がいい? |
NACに対応するのはシスコのIOSソフトウェアをベースにした「Cisco 800」シリーズから「Cisco 7200」シリーズまでのアクセス、ミッドレンジルータ。シスコのネットワークセキュリティ管理製品、アクセス製品にも対応する。また、2005年第1四半期中にスイッチの「Catalyst 2900」シリーズから「Catalyst 6500」シリーズ、「VPN 3000」シリーズもNACに対応させる予定だ。
NACの主な役割はエージェントをクライアントPCなどエンドポイントのデバイスにインストールし、そのクライアントPCにインストールされたセキュリティソフトからセキュリティ情報を収集すること。セキュリティ情報はシスコのルータに伝えられ、あらかじめ設定したセキュリティポリシーに照らし合わせて、もしセキュリティポリシーに違反する場合はそのクライアントPCのネットワーク接続を拒否する。セキュリティ対策が不十分なクライアントPCの社内ネットワークへの接続を拒否することで、ウイルスなどの脅威が社内に拡大しないようにする。エージェントにはセキュリティソフトから情報を集める「Cisco Trust Agent」と、OSのパッチ情報を収集する「Cisco Security Agent」の2つがある。
シスコのNAC提供開始に合わせて、シマンテック、トレンドマイクロ、マカフィーの3社が対応製品を発表した。シマンテックは「Symantec Client Security 2.0」「Symantec AntiVirus Corporate Edition 2.0」の2製品をNACに対応させる。シマンテック 代表取締役社長 杉山隆弘氏によると、NACに対応させることでウイルス定義ファイルのバージョンや日付などのほかに、ソフトの名称やバージョン、自動防御設定などの情報がシスコのルータに提供されるという。
トレンドマイクロはNAC対応の「ウイルスバスター コーポレートエディション 6.5」を9月14日に出荷する。NACに対応したポリシーサーバの「Trend Micro Policy Server for Cisco NAC」を同梱していて、パッチが更新されていないなどセキュリティ対策が不十分なクライアントPCのネットワークへの接続を拒否する。トレンドマイクロはNAC対応とは別に今年6月にシスコとの協業を発表している。協業はトレンドマイクロのネットワークウイルス防御技術をシスコのルータ、スイッチに実装する内容と、「Cisco Incident Control Center」(CICC)と「Trend Micro Network VirusWall」を連携させて、脆弱性診断、感染予防、感染復旧などのサービスを提供する内容。2004年下半期にも実装する予定だ。また、2005年にはファイルベースのウイルス対策技術をシスコ製品に実装する計画もある。
7月に日本ネットワークアソシエイツから社名を変更したマカフィーは「VirusScan Enterprise 8.0i」でNACに対応する。マカフィーの代表取締役社長 加藤孝博氏はVirusScan Enterprise 8.0iとNACのテクノロジを組み合わせることで「クライアントPCの古い定義ファイルを自動で更新できる」「社外から持ち込まれたPCのネットワーク接続拒否」などを可能にするとアピールした。
シマンテック、マカフィーは今回発表した製品以外でもNAC対応を進めていく考え。トレンドマイクロは「NACはエンドポイントのセキュリティ保護がメイン。エンドポイントの保護はウイルスバスター コーポレートエディション 6.5で基本的に十分」(トレンドマイクロ マーケティング統括本部 プロダクトマーケティンググループ アライアンスマーケティング課 課長 大田原忠雄氏)との考えで、NACとは別に、シスコ製品へのアンチウイルス技術の統合に注力する方針だ。
シスコの黒澤氏は3社とのパートナーシップについて「3社を合わせると(セキュリティ市場の)ほとんどのインストールベースをカバーできる」と説明。「シスコはこれからルータやスイッチ、IP電話関連などすべての製品にセキュリティを付加する。これからは“セキュリティ・ルータ”、“セキュリティ・スイッチ”でNo.1を目指す」と強調した。
(編集局 垣内郁栄)
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