オラクルが「オンデマンド」に参入、E-Business Suiteを月額3万円で

2004/9/2

 IT業界で「オンデマンド」といえばIBMを連想するが、日本オラクルからもオンデマンド型のビジネスソリューション「Oracle On Demand@NSSOL」が9月1日に発表された。同社の統合業務アプリケーション「Oracle E-Business Suite」(以下、EBS)を導入する企業に対し、システムの運用・管理サービスを従量課金制で提供するというもの。さらにパートナー企業である新日鉄ソリューションズが提供するハードウェア・インフラの機器使用料や保守費用まで料金に含める。

記者発表に臨む新日鉄ソリューションズ 代表取締役社長 鈴木繁氏(左)、日本オラクル 代表取締役社長 新宅正明氏

 「システム開発に要するTCOを削減したいという強い要望がユーザー企業に存在する。特にメインフレームからオープンシステムへの移行を望むユーザーの多くは、自社で専門知識を持つエンジニアを調達し長期間運用していくコストに、非常に敏感になってきた」と、新日鉄ソリューションズ 代表取締役社長 鈴木繁氏は指摘した。同社のデータセンターでは、24時間365日のシステム監視・運用サービス「EMERALD」(エメラルド)を展開しており、これに日本オラクルのEBSを組み合わせた。「経理や人事、在庫・顧客管理といった基幹業務システムにおいて、ハードウェア/ソフトウェアを所有することなく、共有インフラを定額で利用できるようにしたサービスは、日本初のオンデマンド・ビジネスといえる」(鈴木氏)。

 Oracle On Demand@NSSOLの窓口業務は新日鉄ソリューションズが担当。EBSを利用するユーザー当たり月額3万円(最小構成50ユーザーから)を支払えば、システムの運用・管理サービスを受けられる。別途かかる費用は、ソフトウェア・ライセンスとアプリケーションのカスタマイズに要する初期導入コスト。試算によれば、独自にハードウェアを購入し、運用管理要員を雇用する場合に比べ、3年間のトータルコストが半減するという。中堅企業および大企業の事業部を顧客ターゲットとし、3年間で100社への導入を目指す。

 日本オラクル 代表取締役社長 新宅正明氏は「日本の慣行として、システム開発はグロスでいくらとなりがちだが、もっとコストの透明化を図るべきだろう。IT化が進んだこの数年で、システムの運用コストが予想外に掛かることにユーザーも気付いてきた。複数年に渡って発生する運用コストを初期段階で明確にし、TCOを削減することがOracle On Demand@NSSOLの狙いだ」と語った。

 同じ「オンデマンド」の対比でいえば、IBMは膨大な自社製品(ハードウェア/ソフトウェア)をテコに、システム開発の効率化を図ることで利益を出そうとしている。これに対し日本オラクルでは、「自社でデータセンターを持つ計画はない。必然的に、ハードウェアに関する部分はパートナー企業にお願いする」(新宅氏)ことになる。また、今回の提携事業では、利ざやが大きいアプリケーションのカスタマイズ開発は新日鉄ソリューションズが担当するという。自社製品のEBSとOracle Databaseのライセンス料、およびその保守管理料金の範囲で収益を上げるのが、日本オラクルの掲げる「オンデマンド」ビジネスモデルだ。アプリケーション・ベンダからサービス・ベンダへの移行を目指す日本オラクルにとって、Oracle On Demand@NSSOLの成否は、今後の事業展開に重要な意味を持つだろう。

(編集局 上島康夫)

[関連リンク]
日本オラクルの発表資料
新日鉄ソリューションズの発表資料

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