ITSSに対応した独自のスキル標準、その先にあるものは?

2004/9/4

 ITスキル標準(IT Skill Standard:ITSS)とは何だろうか。経済産業省のWebサイトに掲載されているドキュメントによれば、「ITスキル標準は、各種IT関連サービスの提供に必要とされる能力を明確化・体系化した指標であり、産学におけるITサービス・プロフェッショナルの教育・訓練等に有用な「辞書」(共通枠組)を提供しようとするもの」とされている。

 これまで、ITエンジニアのスキルレベルを測る業界共通の物差しはなかった。さまざまなベンダ資格や国家資格はあるが、それだけでITエンジニアのスキルレベルを測るというのも無理がある。これまでの試みなどから考えれば、ITSSという体系を持ち込んでも、そう簡単には実際に“ITスキルの標準”にはならない。ITエンジニアの多くもそう考えているのかもしれない。

 が、企業もそうだとは限らない。さまざまな企業がITSSに言及し、研修や教育ベンダもITSSのレベルを明示している。その理由は何か。それは成果主義を徹底するため、ユーザー企業からの単価引き下げへの対応など、さまざまな理由が挙げられるだろう。とにかく、企業も自社のエンジニアのスキルを測りたがっているのだろう。また、企業がITSSを採用することで、ITエンジニア個人(従業員)のスキルパスやキャリアパスが見いだせるのであれば、企業も個人も幸せになれる、そうも考えているのかもしれない。

 パソナテックも9月3日、ITSSに対応した独自のスキル指標を開発、導入するという。ITスキル標準に対応した同社独自のスキル標準は「パソナテック・スキルスタンダード」(PASONATECH Skills Standard:PTSS)という。パソナテックによれば、人材サービス業界としては初めてロール(役割)モデルタイプの指標を導入するという。PTSSはITSSの不足分を補い、ITエンジニア個人がスキル標準を利用して、各自のキャリアをマネジメントできるサポートツールとしても利用できるという。ロールモデルとは、プログラマやシステムエンジニアといった職種ではなく、ある職業に「職域」というものを定義し、その中における具体的な役割から必要なスキルを判断するものだという。

 今後パソナテックは、PTSSに基づくキャリアカウンセリングを行い、2005年3月末までに3000名をPTSSのレベルを認定していくという。これにより、ITエンジニアは自分自身の位置を把握することができ、企業側はプロジェクトの人員構成を行う際に、足りない役割を把握することができるようになるとする。

 こうした試みが成功するかの1つの試金石は、PTSSが普遍性を持てるか、そしてITSSを利用した、今後他社が開発するであろうスキル標準と比較可能か、という点にある。もちろん、ITSSから派生したものであれば、ITSSを介して比較可能だろう。ただし、それが簡単にできるかどうか、そこが問題となる。そうでなければ、ITSSに対応したさまざまなローカルルールが散在するようになり、結局はITエンジニアを混乱させるだけになるからだ。

(編集局 大内隆良)

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パソナテック

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