オラクル“哲学”が作り上げた統合アプリケーション

2004/9/11

 日本オラクルは、9月6日にロンドンで行われた「ORACLE OPENWORLD」で発表した企業向けアプリケーションの新バージョン「Oracle E-Business Suite 11i.10」(以下EBS)について、日本国内のプレス向けに解説を行った。

 EBSはERPやCRM、SCMといった企業のバックエンドからフロントエンドまでの、産業別に用意された機能を持つソフトウェアの集合体。コアの部分にはOracleデータベースと、すべての産業で共通に使えるデータモデルが実装され、その上で稼働する自動車、化学、通信、消費財、製造業などさまざまな産業向けアプリケーションが用意されている。

日本オラクル マーケティング本部 シニアディレクター 清水照久氏

 同社のマーケティング本部 シニアディレクター 清水照久氏は「現在、ハードウェアデザインはSMPアプローチからグリッドへの変曲点を迎えている。と同時に、アプリケーションとIT基盤の再同期化も必要だ」として、データベース、アプリケーションサーバ、統合アプリケーションなど各レイヤの製品群をラインナップする同社の優位性を示した。

 同社プロダクトオペレーションズ 林雅音氏は、EBSが“single source of truth”(真に唯一のデータソース)と呼ばれる哲学をもって開発された点を最初に挙げる。EBSはさまざまな業種に対応するが、そのすべてに対応するデータモデルを開発し、一貫したデータを維持するデータベースを中央に持つ。この周囲に、業種ごとのアプリケーションが配備される。データベースベンダが作り上げた特徴あるアーキテクチャだといえる。「国内の企業に限って考えても、このデータモデルでほとんどの要求は満たせるという自信がある」(林氏)。

 新機能のハイライトの1つは無線ICタグ(RFID)に対応したこと。タグを認識して、発生するトランザクション処理などを自動的に行う。流通業者などをターゲットに想定。「米国ウォルマートが積極的に推進しており、その納入業者は対応せざるを得なくなっている」(林氏)。

 また、BtoBが発達することで購買契約には柔軟かつ緻密さが求められるようになる。政府調達などでも明確な購買契約が想定される。EBSでは購買機能などいくつかの点で契約管理機能を強化している。

 EBSにはそのほか、XMLベースで帳票開発を行える「XML Publisher」、HTMLアプリケーションの開発環境「OA Framework」などを揃え、カスタムアプリケーション構築の手間を大幅に減らせるという。また、カスタムアプリケーションに利用した部分をレポジトリに保存し、以後さらにカスタマイズが発生したときに、影響範囲がすぐに分かる機能も用意した。「アプリケーションインテグレーションの工数とコストをEBSでいかに低くするかを検討した結果だ」(林氏)。

 数年前まで、企業のバックオフィスアプリケーションは、ERPによるアプリケーション統合へと向かっていた。しかしSOAの登場以後、複数のアプリケーションをSOAによって疎結合する方向へと現在は大きく転換している。オラクルは「EBSはすでにSOAに対応完了している」としており、今回はいち早くその流れに沿った強化を行ったといえるだろう。

(編集局 新野淳一)

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