[Borland Conference 2004開催]
ソフトウェアの展開を最適化する「SDO」

2004/9/15

 米ボーランドが主催する開発者会議の「Borland Conference 2004」が、米・カリフォルニア州サンノゼにて、9月12〜15日(現地時間)まで開催されている。昨年のBorland Conferenceは.NET Frameworkにフル対応した最新版Delphi 8が紹介されたほか、ALM(Application Lifecycle Management)への取り組みを鮮明にするなど、ボーランド創立20周年を飾る多くの注目の発表が行われた。今年のBorland Conferenceでは、さらに基礎を固めつつ、将来的な戦略としてのALMをより前面に押し出してきた印象を受ける。

米ボーランド社長兼CEOのデール・フラー氏

 9月12日のオープニング・キーノートで米ボーランド社長兼CEOのデール・フラー(Dale Fuller)氏は、「われわれ(ボーランド)は、どこからやってきたのか。過去を振り返ると、よりよい開発ツールを20年間にわたって開発者に提供し続けることで、業界リーダーの地位を築いてきた。ボーランドのベースはあくまで素晴らしいツールを開発者に提供していくことであり、今後もそれは変わらない」と、開発者本位のスタンスを説明した。そのうえで、同氏はボーランドの将来の戦略についても触れた。

 「よりよい開発ツール作りの次の目標は、さらに生産性を高めることだ。これはコードの記述だけに限らず、ビジネス・システムの生産性を高めることにある。例えば、システム開発プロジェクトの3分の1は遅延などで失敗の結果に終わり、予算を無駄に消費している。さらに完成したシステムにおいても、その80%が何らかの問題を抱えている状態だ。もしシステムに改修を加えようと思ったら、多くの金額を請求されることになる。要求定義をきちんと行い、開発者間の連携を強化していくことで、システムの柔軟性や管理性をアップし、開発コストをダウン、展開までの迅速化も実現する。システムを最適化することで、記述されたコードから最大限のビジネス・パワーを引き出すのだ。ALMをベースにしたこの考え方を、われわれは『Software Delivery Optimization(SDO)』と呼んでいる」とフュラー氏は述べる。

 ボーランドが提唱するALMとは、開発の一連のサイクル(「要件定義」「設計」「開発」「テスト」「運用」)と、開発におけるプロセスを管理するソフトウェア群をワンストップで提供するものだ。

 同社は9月13日(現地時間)、このうちの要件定義と開発プロセス管理の部分をつかさどる製品の最新バージョン「CaliberRM 2005」と「StarTeam 2005」の2製品を発表した。フュラー氏によれば、両製品は同社のSDO戦略の中核となるもので、従来バージョンよりも同社のほかの開発ツール製品との連携性がアップしている。分析などの機能強化も図られており、CaliberRM 2005には同社が9月初旬に買収を発表したプロジェクト計画・評価ツールの「ESTIMATE Professional」が同梱される予定である。

 ボーランドは、古くは安価で良質なPascalやCのコンパイラを提供することでプログラマらからの支持を取り付けていた。そうした層がいまだユーザーの中心である同社としては、DelphiやJBuilderなどの手慣れた開発ツールに、StarTeamなどの開発者同士のコラボレーション機能を統合していくことで、開発者たちを自然な形でさらに上のレベルへと引き上げていこうとする考えだ。

 12日の基調講演では、Delphiのメジャー・バージョンアップに当たる製品「Delphi DiamondBack」の簡単な機能紹介ビデオが上映された。次期Delphiでは、Delphi 8で別々の機能として存在していた.NET開発ツールとWin32開発ツールの両部分を完全統合し、さらにObject Pascal以外にC#でのコード記述も可能になるという。StarTeamのコラボレーション機能も統合され、本格的なエンタープライズ開発ツールとしての特色を強めることになりそうだ。

(鈴木淳也:Junya Suzuki)

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