Delphi 7で.NET対応を加速するボーランド
2002/8/9
ボーランドは、8月6日(米国時間)に正式発表された「Borland Delphi 7 Studio」(以下Delphi 7)の概要を説明するワークショップを8月8日に開催した。同製品は、2002年5月に米国で開催された「BorCon USA」にて、開発コードネーム「Aurora」として紹介されたものであり、.NET対応Delphiとして期待を集めている。今回のワークショップでは、米国ボーランド ディベロッパー・リレーション部門シニア・マネジャ兼ボーランド・コミュニティ・ウェブサイト アーキテクトのジョン・カスター(John Kaster)氏が来日、解説を行った。
米国ボーランド シニア・マネジャ ジョン・カスター氏 Object PascalをDelphi言語に改称したのは、「歴史的な間違い(笑)を訂正するためだ」 |
Delphiにおいて.NET対応をつかさどるのが「Delphi for .NET」である。Delphi 7では、Delphi for .NETのPreview Editionが搭載されている。Delphi for .NETは、CIL(Common Intermediate Language)コンパイラとランタイムライブラリからなり、.NET Frameworkへのフルアクセスを提供する。同社によると、Delphi for .NETではASP.NET、.NET Web Services、WinForms、CF(Compact Framework)を完全にサポートし、さらにDelphi for Windowsとの互換性もある。これにより、Delphiで作成したWindowsアプリケーションを.NETに容易に移行できるという。
UMLが取り入れられた点も注目に値する。MDA(Model Driven Architecture)テクノロジによる少ないコード量での開発を掲げ、ビジュアルモデリングおよびリファクタリングツール「ModelMaker」を搭載した。
ほかにも、Webアプリケーションを開発できる「IntraWeb」、運用ライセンス無制限のDataSnap(旧名:MIDAS)、レポートツール「Rave Reports」そしてKylix 3 for Delphi(Kylix 3のDelphi言語のみのバージョン)などが含まれる。
注:DelphiおよびKylixで採用されている開発言語はObject Pascalから「Delphi言語」に改称された(Kylix 3のC/C++は除く)。
Delphi 7は製品構成によって次の4つのバージョンが用意される。
- Delphi 7 Studio Architect
Kylix 3 Enterprise(Delphi言語版)を含む全機能を装備
- Delphi 7 Studio Enterprise
Kylix 3 Enterprise(Delphi言語版)、ModelMaker、Rave Reports、IntraWebを装備
- Delphi 7 Studio Professional
Kylix 3 Professional(Delphi言語版)、Rave Reports、IntraWebを装備
- Delphi 7 Personal
注:Delphi 7 Personalに「Studio」は付かない
日本語版の発売日や価格などは2002年8月下旬に発表される予定。また、Delphi 7 Studio Architectトライアル版(30日間無料)のダウンロードサービスも予定されている。
Galileoの概念図。マイクロソフト、非マイクロソフトにこだわらない、広範な技術をサポートすることが分かる (クリックすると拡大します) |
Delphi 7と同時に、次世代IDE(統合開発環境)である「Galileo」(開発コードネーム)についても簡単に説明が行われた。
Galileoは「100% Pure .NET Development Solution」、つまり.NET Framework上で動作する.NETアプリケーションとして開発される開発環境である。同社のJava開発環境「JBuilder」がJavaで記述されたJavaアプリケーションであることを想起すれば分かりやすいだろう。Galileoは複数の.NET言語やCOM、SOAP、CORBAをサポートし、.NETに対応した多くのプラットフォームで動作するソフトウェアの開発環境を提供する。Galileoについては現在のところ、不明な点が多いが、2003年第1四半期提供予定とされている。
このように、ボーランドは.NETへの対応を積極的に推し進めており、マイクロソフトとの関係も良好だという。「最近のマイクロソフトは非常に変わってきており、数年前とはまったく違う。われわれは、マイクロソフトからすばらしいサポートを受けている」(カスター氏)。アンダース・ヘルスバーグ氏の移籍に際しては、米国ボーランドが米国マイクロソフトを訴えるなどの過去もあった(注)が、2002年のBorCon USAではヘルスバーグ氏がマイクロソフトのスタッフとしてセッションを行うなど、カスター氏がいうように両社間のわだかまりは解決されたようだ。
注:アンダース・ヘルスバーグ氏はもともとボーランドでDelphiを開発した人物で、後にマイクロソフトに移籍、.NET FrameworkやC#の開発を行うことになる。
(編集局 中澤勇)
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