SAPが期待する「病院向けERPへの追い風」

2004/9/17

 SAPジャパンは同社の「SAP for Healthcare」の会計モジュールを、全国に病院施設を展開する社会福祉法人 聖隷福祉事業団が導入すると発表した。SAPによると全国に展開する病院にERPの会計モジュールが導入されるのは初めて。SAPジャパン サービス産業営業本部 第一営業部 部長 本間誠氏は「人口減などで病院の患者の取り合いが起こり、病院もうかうかしていられないという風潮が出てきた。ERP導入の追い風が吹いてきた」と述べ、2004年中に2〜3、2005年には10前後の病院チェーンにERPを導入したいと語った。

SAPジャパン サービス産業営業本部 第一営業部 部長 本間誠氏

 聖隷福祉事業団はSAP for Healthcareを導入することで、病院5施設(2216床)と健診2施設の医療・保険事業、介護老人保健施設など67施設の住宅・福祉サービス事業、有料老人ホームなどの7施設(2413戸)の財務会計を効率化する。全国の施設の財務をリアルタイムで把握できるようになり、各種経営分析や決算の早期化、使いやすいシステムの構築などを実現するという。2005年4月の本番稼働を予定している。

 SAPジャパンが病院・医療分野の営業を本格化させたのは2002年。営業やコンサルティング、開発など10人体制の専任組織を立ち上げた。SAPがもともと強みを持っていた医薬メーカーへの導入を足がかりに、医薬卸しや病院へのERP導入を働きかけている。SAP for Healthcareは国内でこれまで5つの病院・医療機関に導入した。

 SAPは病院・医療の業務を3つに分けて考えている。1つ目は財務会計や人事管理、情報分析などバックエンドを支える「管理業務系システム」。2つ目は電子カルテシステムや患者情報、病歴情報、診療費会計などを管理するフロントエンドの「診療業務系システム」。そして、3つ目がこれらのシステムを連携させるインフラとなる。今回、SAPが聖隷福祉事業団に導入したのは管理業務系システムの会計モジュール。本間氏は「電子カルテに強いベンダや開発パートナーとの協業を強化し、バックエンドから病院のフロントエンドへと導入の実績を展開したい」と述べた。

 SAPは病院・医療施設の規模に応じてERPの導入を提案している。400床以上の中規模病院にはコンサルティングを実施してTo-Beモデルや経営戦略を明確にした後にERPを導入する。全国展開する病院チェーンや学校法人が対象で総コストは2億円以上になるという。399床以下の中規模以下の病院に対してはテンプレートの導入、またはシェアードサービスでERPの利用を提案する。この場合の総コストは1億円以下に抑える。

 本間氏は病院・医療業界にSAP R/3の拡張性、柔軟性、俊敏性をアピールすると説明した。加えて「病院・医療業界は横にらみの傾向があるので、ERP導入の実績を示して口コミで導入が進むことも期待している」と述べた。

(編集局 垣内郁栄)

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SAPジャパンの発表資料

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