デジタル・ライフスタイルとテラバイトの時代

2004/10/23

米インテル 上席副社長兼CTOのパット・ゲルシンガー氏

 WPC EXPO 2004の基調講演のテーマは、PCを取り巻く状況をある程度先取りする内容が盛り込まれる。2004年のWPC EXPOは「デジタル・ホーム・ネットワーク」というキーワードに象徴されるさまざまな技術が展示されており、基調講演もPCと家電を融合し、新たなライフスタイルを生み出すというラインに沿って展開された。例えば、10月20日に基調講演を行ったマイクロソフトの最高技術責任者 古川享氏は「Windows XP Media Center Edition 2005」や「音楽配信サービス」を取り上げ、22日には米インテル 上席副社長兼CTOのパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏が「デジタル・ライフスタイルの創造」と題し、インテルの“デジタルホーム戦略”の概略を紹介したことからも明らかである。

 通信とコンピューティング技術の融合は、企業内における事務処理支援機器としてのPC(およびその技術)をより人々の日常生活に密着した機器(家電など)へ応用していくという方向に導いている。インテルは「エンターテインメント」「教育」「コミュニケーション」といったライフスタイルを構成する3要素に焦点をあて、技術的な進歩を一般の消費者にもわかりやすいイメージで伝えようとしている。ゲルシンガー氏は「デジタル・ライフスタイルの幕開け」とし、デジタル家電市場におけるインテルの位置付けを強調した同社のデジタル・ホーム・ネットワーキングの取り組みとして現在最も広範に紹介されているのは、広域無線LAN規格“WiMAX(IEEE 802.16/16e)”や機器間接続におけるコンテンツ保護技術「DTCP-IP(Digital Transmission Content Protection over Internet Protocol)」だろう。特に後者は、2003年6月に松下電器、東芝、ソニー、インテル、日立製作所の5社で設立した「デジタルホーム・ワーキング・グループ」が開発したコンテンツ保護技術の標準で、ゲルシンガー氏が現在最もアピールしている技術である。

 「デジタルホーム・ワーキング・グループ」は「DLNA(Digital Living Networking Alliance)」と名称を変更し、6月にガイドライン1.0をリリースした。メンバー企業は170社以上にまで拡大している。9月に米国で行われたインテルの開発者会議「インテル・デベロッパ・フォーラム(IDF)Fall 2004」では、DTCP-IPを利用したデジタル・メディア・アダプタ(DMA)の実際の商品が紹介され、さらに、米国のオンライン・ムービー配信サービス企業MovieLinkとSTARZ! Ticket on Real Movies2つのオンライン映画配信サービス事業者が同プラットフォームに対応したプレミアム・コンテンツの配信を開始するとの発表を行っている。ゲルシンガー氏が基調講演で行ったデモは、インターネットを通じてダウンロードした映像コンテンツをDMAを介してDTCP-IPを利用しながら、ほかのテレビに転送するというものだった。

 同社に限らず、デジタル・ホーム・ネットワークの世界に期待するITベンダは、データセットのサイズが今後さらに増大し、テラバイトの時代を目前にしていると主張する。もちろん、インテルも例外ではなく、テラレベルのワークロードが処理可能なコンピューティング・アーキテクチャのコンセプトをすでに発表している。すなわち、「認識(Recognition):特定のユーザーやアプリケーションにとって意味のあるパターンやモデルを認識する機能」「抽出(Mining):認識段階で特定したパターンやモデルに照らして現実世界に存在する大量のデータを調査する機能」「合成(Synthesis):該当するパターンやモデルに基づいて大量のデータセットまたは仮想世界を合成する機能」という3つのワークロードの頭文字を取ってRMSとし、このRMSワークロードを最終的には1チップで実現できるアーキテクチャの開発を目指している。そして、これは現時点では存在しないテラフロップスの処理能力を発揮するマルチコア・アーキテクチャの開発を意味する。19日に行った技術セミナー「Intel R&D Day」では、半導体製造技術のロードマップを示しており、2005年中に65nmプロセスでの製造を開始し、2007年に45nm、2009年に32nmへと微細化技術を追求していく計画を明らかにしている。

(編集局 谷古宇浩司)

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