新体制となったトレンドマイクロ、今後5年の戦略を読む
2005/1/7
トレンドマイクロの代表取締役社長 兼 CEOに就任したエバ・チェン(Eva Chen)氏は1月6日に会見し、セキュリティ脅威のライフサイクル管理などを柱とする今後5年間の新戦略を発表した。
トレンドマイクロの代表取締役社長 兼 CEOに就任したエバ・チェン氏 |
チェン氏はトレンドマイクロで取締役グループCTOなどを歴任。1月1日付で代表取締役社長 兼 CEOに就任した。前任のスティーブ・チャン(Steve Chang)氏は代表取締役会長に就いた。
チェン氏はトレンドマイクロの企業ミッションを「予測不可能な脅威に対して、顧客のデジタル業務の継続を保証すること」と説明。そのミッションを実現するための3つの戦略を発表した。1つ目は、ライフサイクルを通してセキュリティ上の脅威を管理すること。予測できないセキュリティ上の脅威が必ず発生することを前提に、脅威の発生からその収束、業務の再開まで顧客のそばで支援を続けられる企業になることがその内容だ。セキュリティ脅威の発生を受けて初めて動き出すのではなく、企業のビジネスを恒常的にサポートし、脅威が発生した際には早急に沈静化を図れる企業体になることを目指す。
2つ目は、未知の脅威に対応できるようトレンドマイクロの組織や製品、技術を改良してアップデートを顧客企業にタイムリーに提供できるようにすること。3つ目が、アップデートを迅速、確実に提供するために「ネットワーク上の情報フローの中にサービス、製品、技術を統合していくこと」(チェン氏)。
ネットワーク情報フローへのサービスや製品、技術の統合とは、ネットワークのインフラ部分にセキュリティ機能を持たせることを指す。携帯電話やVoIP、デジタル家電などネットワークを利用する機器が増加し、エッジでセキュリティを完全にコントロールすることが今後難しくなるとの認識が背景にある。「世界全体が接続されている巨大なTCP/IPネットワークでは、スタンドアロンのセキュリティ保護策では不十分。私たちが“グッドネイボーネットワーク”“ネイボーウォッチネットワーク”と呼ぶネットワークが重要になる。近隣のネットワークを安全なネットワークにしないといけない。自分を保護することで他者も保護するようなネットワークを作り上げることが重要になる。ネットワークの中にセキュリティを組み込み、セキュリティをネットワークの一部にしていかなければならない」(チェン氏)。
トレンドマイクロは2004年、シスコシステムズにウイルス対策技術を提供するなど、ネットワーク・インフラへのセキュリティ技術の組む込みに取り組んできた。2005年もインフラ製品を扱うベンダとの協業を進めるとみられる。
トレンドマイクロの代表取締役会長 スティーブ・チャン氏 |
トレンドマイクロはこの3つ戦略を実現するため組織を変更する。企業規模だけでなく、業種全体のニーズを考慮して顧客を分類し、それぞれの区分に最適な営業、技術、サポートの人員を配置する組織を作る。各組織に権限を持たせることで意思決定の迅速化を狙う。
合わせてパートナーも再編する計画。トレンドマイクロの執行役員 日本代表 大三川彰彦氏は、現在のパートナーを、販売パートナー、製品のインテグレーションを行うアライアンスパートナー、教育、アフターサポートを提供するパートナーなどの分野別に整理する考えを示した。
スティーブ・チャン氏は今後、“トレンドマイクロ・カルチャー”の継続、発展に注力する。チャン氏は「戦略を作り、実行するために組織を再編した。私自身の役割も変えた」と述べたうえで、「私の役割は会社の文化をみて、会社全体を(過去のセキュリティの脅威などから)学習する組織に変えること。そして正しい方向に戦略が実行されているかを確認することだ」と説明した。
(編集局 垣内郁栄)
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