グリッド構築の共通モデリング言語、EGAが発表
2005/5/12
企業情報システムへのグリッド・コンピューティングの導入促進を目指す業界団体「エンタープライズ・グリッド・アライアンス」(EGA)の日本運営委員会は5月11日、ベンダやシステム・インテグレータ(SIer)、エンドユーザーがグリッドを実装する際のフレームワークとなる「EGA参照モデル」を発表した。EGA日本運営委員会は「グリッドのほかの標準化団体の仕様をマッピングしてグリッドに関する共通言語になれば」としている。
EGA日本運営委員会議長で、日本オラクルの鈴木俊宏氏(左)とEGA日本運営委員会、日本HPの阿部恵史氏 |
EGAはオラクルやサン・マイクロシステムズ、ヒューレット・パッカード(HP)、NEC、ネットワーク・アプライアンスなど32のベンダ、SIerが参加。2004年4月に米国で設立し、同年7月に国内での活動を始めた。EGA日本運営委員会議長で、日本オラクルの鈴木俊宏氏はEGAの目的について「計算能力に焦点を当てた学術、科学分野での実績から脱却して、エンタープライズ・コンピューティングでグリッドをどう使っていくかを考える」と説明。「グリッドの標準をガリガリ作るのではなく」(鈴木氏)、 Global Grid Forum (GGF)など既存のグリッドの標準化団体と協力して、企業情報システム向けのソリューション開発に焦点を当てる。
発表したEGA参照モデルは「EGAが初めて一般に発表した成果物」(鈴木氏)。グリッドに関する用語集とモデルの定義、ユースケースで構成する。用語集はグリッドのモデルに直接関連する用語を抽出。ほかの標準化団体の定義を参照し、用語を解説する。ベンダやユーザー間で用語の混乱をなくし、スムーズな意思決定をサポートする。
モデルの定義では、企業情報システムの各コンポーネントをモデリングして、オブジェクトとみなす。オブジェクトとなるのは、具体的なコンポーネントではサーバやディスク、スイッチなど。抽象的なコンポーネントではアプリケーション、サービスなど。モデリングで、これらのオブジェクトの関係性を分かりやすく表示することが可能となる。既存のテクノロジとグリッドを適用した場合のテクノロジの比較、グリッド・アーキテキチャ全体における製品のマッピングなどが簡単になるという。
モデリングによって、グリッドにおけるリソースのライフサイクル管理も容易になる。グリッドでは、定義されたオブジェクトに対してリソースを割り当てる(プロビジョニング)。このリソース割り当ては、あらかじめ設定したポリシーに基づき、「グリッド管理エンティティ」とEGAが呼ぶ機能が実行する。グリッド管理エンティティはコンポーネントの運用を監視し、処理が終了すればリソースを開放する。EGA参照モデルはプロビジョニングをめぐるリソースのライフサイクルをシンプルに表示する。
ユースケースは、モデル上に構築し、グリッドの各ソリューションに関する要件を定義する。要件を定義することで、グリッド構築に必要な製品やサービスが明確になる。今後策定するEGA参照モデルのバージョン2.0では、ユースケースをより詳細に定義することを目指す。
(@IT 垣内郁栄)
[関連リンク]
EGAの発表資料(PDF)
EGA
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