グリッド商用化を急ぐNEC、自社内の運用も開始へ

2005/2/3

 NECは2月2日、統合運用管理ソフトウェア「WebSAM ASManager Ver2.0」と、データサーバ間でのコンピュータ・リソースのプロビジョニングを可能にするソフトウェア「WebSAM GlobalGridOrganizer」を発表し、ミドルウェア製品群「VALUMOウェア」のグリッド・コンピューティング関係の機能を強化した。NECは国内のグリッド関連市場を2008年に約5000億円に拡大すると予測していて、そのうち国内30%のシェア確保を目指すという。

NECのグリッド推進センター長 石倉直人氏

 NECのグリッド推進センター長 石倉直人氏は、グリッド関係の機能追加で「VALUMOのロードマップが完成した」と明言。さらにWebSAM ASManager Ver2.0の開発で「ITリソースの仮想化での完成を見た」と述べた。

 WebSAM ASManagerで強化したのは、過去のシステムの運用状況からシステムの障害を検知し、自律的に修復を行う「ベースライン監視機能」と、データセンター内の複数のサーバを業務単位でグループ化し、システムの負荷状況に応じて各グループにITリソースを割り当てる「自動プロビジョニング連携機能」。価格は137万円からで2005年5月末に出荷予定。

 WebSAM GlobalGridOrganizerは、NECが日立製作所、富士通と協力して行っている経済産業省の「ビジネスグリッドコンピューティングプロジェクト」の成果を製品化した。複数のデータセンターのITリソースを一元管理できるのが特徴。システム障害時や負荷が高まったときに業務を別のデータセンターに割り当てることができ、災害などでデータセンターが被害を受けたときに別のデータセンターに処理を肩代わりさせる使い方もできるという。石倉氏によると、ビジネスグリッドコンピューティングプロジェクトの成果を製品化すると具体的に発表するのはNECが初めてで、「他社に一歩先んじている」としている。WebSAM GlobalGridOrganizerは2005年度第3四半期に発売する。

 NECはグリッド導入に必要なハードウェアやミドルウェアをパッケージにした「ビジネスグリッド構築スイート」も開発した。第1弾として自社の営業情報システム「BEAT」でのグリッドの実証実験から生まれた「サーバ共有モデル」を発売した。BEATは営業の財務処理などを行う「基幹系」と顧客データベースなどを運営する「検索系」の2つのシステムで構成。茨城県のデータセンターで約160台のサーバを使って運営しているシステム。約1万人が利用していて「営業活動の心臓部」(NEC インターネットシステム研究所 部長 妹尾義樹氏)という。グリッドの実証実験ではBEATと同じ構成のデモシステムをサーバ3台で構築し、基幹系、検索系の各サーバが負荷に応じてリソースを自律的に融通することを検証した。NECは2005年度にBEATの実システムにグリッドを展開する予定で、運用管理コストなどを中心にTCOを20%削減できると見込んでいる。

 サーバ共有モデルは、WebSAMなどの運用管理のミドルウェアとNECのサーバ「NX7700i」「NX7000」、ストレージ、アプリケーションサーバ、データベースなどで構成する。価格は1490万円で2005年7月に出荷予定となっている。石倉氏によると、OSをHP-UXからWindows、Linuxに変更することで「1000万円を切ることも可能」だという。NECは自動車メーカーのマツダともグリッドの実証実験を行っていて、その成果をベースに、WebSAM GlobalGridOrganizerを活用した「災害広域対策モデル」も2005年度第4四半期に出荷することを計画している。

(@IT 垣内郁栄)

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NECの発表資料

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