実は仲良し? オラクル、SAP両社長がSOA巡って対談

2005/5/26

 パワードコムが主催するイベント「POWEREDCOM FORUM 2005」で、業務アプリケーションでライバル関係にある日本オラクルの代表取締役社長 新宅正明氏と、SAPジャパンの代表取締役社長 藤井清孝氏がパネルディスカッションを行った。競合する企業のトップ同士が同じ席に立つのは異例。日本IBM出身で、SAPジャパンの代表取締役社長や米i2テクノロジーズ COOなどを務めたパワードコム 代表取締役社長兼CEO 中根滋氏が2人を引き合わせた。オラクル、SAPという「エンタープライズ・ソフトウェアの2大リーダー」(中根氏)が語ったのは、「SOAによって変わるソフトウェア・ビジネスの未来」だった。

パネルディスカッションに参加した日本オラクル 新宅正明氏(左)とSAPジャパン 藤井清孝氏

 新宅氏はオラクルのソフトウェア・ビジネスの未来として、サービスとしてのソフトウェアとサブスクリプションベース(従量課金)の課金体系が重要になると指摘した。「(ライセンスではなく)どれだけの価値を提供できたか、リソースを提供できたかで課金する」と未来のソフトウェア・ビジネスを説明。新宅氏は「この2つが当面のオラクルのビジョンだ」と強調し、SOAへのコミットメントを示した。

 同じく「SAP NetWeaver」などミドルウェア製品を使ってSOA環境への対応を進めるSAPジャパンの藤井氏は、SOAを「ユーザーから見るとソフトウェアを感じさせずにサービスとして提供すること」と説明。ソフトウェアもガチガチで柔軟性に欠ける仕組みから、手作りや他社製ソフトなどを柔軟に組み合わせられるようなアーキテクチャに変化すると述べた。「競争力の源泉になるところはすべて個別解としてソフトウェアが混在できるようにする」(藤井氏)。藤井氏はまた「ネットワークの進化がSOAの前提条件になる」とも述べ、パワードコムなど通信会社が柔軟なサービスを提供することへの期待を示した。

 パネルディスカッションでは、新宅氏がデータベースを含めて情報システムのSOA対応について説明。藤井氏は業務アプリケーションのSOA対応を語りながら、ソフトウェアベンダの姿勢の変化を語った。

 新宅氏は企業情報システムの動向について、「エンタープライズ・アーキテクチャ(EA)の完成をにらんでミドルウェアの整備とデータモデルの論理的な整備が始まっている」と指摘。この2つの整備によって企業はリアルタイム経営を実現できるというのが新宅氏の考えで、さらに「企業にとっては30年前と同じようにデータベースとネットワークが重要な議論対象」とした。「データベースとネットワークについての議論をフォローし、企業をSOAにいざなうのがわれわれソフトウェアベンダの役割だ」(新宅氏)。

 藤井氏はSOA導入に関して、「SOAのキーワードはインクリメンタル・インベストメントで、既存投資の保護」と説明した。投資を保護するためには既存システムを廃棄して、新規システムをビッグバンで導入するという選択肢は基本的にはない。藤井氏は、「SOAはSAP教に改宗してくださいという宗教戦争ではない。ビジネスにとって意味にあるところはパッケージを使って、意味のないところは手作りでいいということ」と説明し、SOA環境ではソフトウェアベンダの囲い込みが意味をなくすことを訴えた。SAPも他社のシステムと組み合わせて利用することができるアプリケーションを次々にリリースしていて、SAPのアプリケーションだけでシステムを構築することを推奨する過去の姿勢を変化させている。ただ、藤井氏は「インテグレーションのプラットフォームは同じにしないとコストは落ちません」とも語り、SAP NetWeaverなどSOAを実現するためにはプラットフォームの選択が鍵になるとの考えを示した。

(@IT 垣内郁栄)

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