45ナノLSIを生み出す富士通研究所の「あきる野方式」とは
2005/6/7
富士通研究所は6月6日、45ナノメートル世代LSI向けに、下層配線部分の絶縁膜すべてに低い誘電率の材料を適用する多層配線技術の開発に成功したと発表した。45ナノ世代LSIの高速化と低消費電力を実現するためのキーテクノロジで、富士通研究所は「研究所としては2008年の量産に向けて準備する」としていて、研究開発を加速させる考えだ。
富士通研究所の取締役 基盤技術研究所所長 土川春穂氏 |
LSI開発では、LSIの微細化によって配線と絶縁膜がコンデンサの働きをしてしまう「寄生容量」の解決が課題の1つになっている。寄生容量を下げるには絶縁材料として誘電率の低い材料を使うのがポイント。富士通研究所が今回開発した多層配線技術は、下層配線部分のすべてに「ポーラスシリカ系材料ナノクラスタリングシリカ」(NCS)と呼ばれる材料を適用し、誘電率を下げることに成功した。65ナノ世代のLSIではNCSは下層配線部分の一部にしか適用できなかったが、強度低下や絶縁不良の原因となる大きな空孔(ボイド)の発生などを抑えた。
従来のLSI開発の手法では、誘電率とLSIの強度はトレードオフの関係だった。しかし、NCSを絶縁膜すべてに適用する今回の開発によって、「低誘電率と高い機械強度を両立できる」と富士通研究所は説明している。試作段階での誘電率は2.25で、富士通研究所の取締役 基盤技術研究所所長 土川春穂氏によると「実装やパッケージングなど実用レベルの評価では、(他社と比べて)最も誘電率が低い」という。
富士通研究所のLSI開発では研究所内用語で「あきる野方式」と呼ぶ、研究所と富士通本体の事業部との連携体制を採っている。LSI開発は事業化までに7年以上かかることもある長期開発が一般的。そのため研究所の要素技術開発と、事業部のインテグレーションや商品開発など密な連携が必要になる。あきる野方式では、インテグレーションの段階で研究所と事業部が合同で特別チームを結成。特別チームは当初は研究所内に設置し、エンジニアリング・サンプル段階まで開発を行う。その後は事業部に移り、カスタマー・サンプルの開発など事業化をにらんだ開発を継続し、商品開発を検討する。「形式的な移管作業を行わず、チームと技術を一緒に動かす」(土川氏)。
あきる野方式は2000年10月の90ナノ世代LSIの開発から採用。2005年4月には45ナノ世代LSIを開発する研究所、事業部合同のチーム「C2プロジェクト部」が発足した。現状では研究所から51人、事業部の開発部門から2人が参加し、研究所のあきる野テクノロジセンターで開発している。
(@IT 垣内郁栄)
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