富士通が新UNIXサーバ発表、メインフレーム技術でIBM打倒

2005/5/18

 富士通は最新版のSPARC64 Vプロセッサを搭載したUNIXサーバ「PRIMEPOWER」の新シリーズを5月17日に発表した。SPARC64 Vの動作周波数は2GHzを超え、高いパフォーマンスを誇るとしている。UNIXサーバの販売が好調な海外での販売に力を入れる。

富士通が発表した新UNIXサーバ「PRIMEPOWER 2500」

 SPARC64 Vは富士通が設計、開発、製造したプロセッサで、2.02GHz、2.08GHz、2.16GHzの各周波数の製品がある。新シリーズは、2.02GHzのプロセッサを最大8CPU搭載できる「PRIMEPOWER 650」と同プロセッサを最大16CPU搭載する「850」、2.16GHzのプロセッサを最大16CPU載せる「900」、同プロセッサを32CPU搭載する「1500」、2.08GHzのプロセッサを最大128CPU搭載できる「2500」の5機種。価格はCPUを2個載せた構成の650で1016万円から。2500を128CPU構成にした場合は8億円を超える。それぞれ6月初旬から中旬に出荷する。

 富士通の経営執行役 サーバシステム事業本部長 山中明氏は「8CPUのミッドレンジ以上のRISCサーバで2GHzを超えるのは初めて」と語った。従来のPRIMEPOWERと比較してCPUのパフォーマンスが1.2倍向上したことを説明し、高性能を強調した。

 信頼性の向上では従来からPRIMEPOWERに搭載しているハードパーティション技術「Extended Partitioning」(XPAR)を900、1500、2500で対応。XPARはサーバのプロセッサを最大で15のグループに分割し、それぞれに独立したOS環境を持たせることができる技術。複数サーバで運用している基幹業務の統合ができる。また、1つのグループに障害が発生しても、別のグループに影響が出ないなどシステム全体の信頼性を高められる。

富士通の経営執行役 サーバシステム事業本部長 山中明氏

 さらにPRIMEPOWERの新シリーズはサン・マイクロシステムズの最新OS「Solaris 10」に対応し、Solaris 10の仮想化技術「Solarisコンテナ」を利用できる。Solarisコンテナはサーバ内を最大8191に分割し、それぞれに対して柔軟にプロセッサのリソースを割り当てることができる機能。日次、月次の業務などスケジュールによって求められるプロセッサのリソースが上下するようなアプリケーションの利用に適している。富士通は業務の特性によってXPARとSolarisコンテナを組み合わせて利用することを提唱している。山中氏は「サーバ統合の潮流に応える機能だ」と述べた。

 XPARなど信頼性向上の技術の多くは、富士通がメインフレームで培った技術が移植されている。SPARC64 Vに埋め込まれ、富士通が他社にはない技術としてアピールしている「ハードウェア命令リトライ」機能などもメインフレームから引き継いだ機能だ。同じくメインフレームの技術をUNIXサーバに搭載しているIBMは、パーティショニング技術として、プロセッサの物理的な構成に左右されずにパーティションを論理的に分けることができるLPAR(ロジカル・パーティショニング)を開発。pシリーズに搭載している。富士通、IBMともメインフレームの高性能、高信頼性技術をオープンサーバに積極的に移植する方針で、UNIXサーバ市場はメインフレーマが機能競争を行う舞台としての一面もある。

 富士通がPRIMEPOWERの新シリーズで狙うのは海外の拡販だ。すでにPRIMEPOWERの出荷台数のうち、約60%は海外市場向け(2004年度実績)。国内がIAサーバの攻勢で出荷台数を減らしているのに対して、欧州では2004年度に出荷台数で41%増、北米でも7%増えた。山中氏は「今年度は国内ではフラットか微増、海外では2ケタの成長を狙っていきたい」と述べた。

 サーバ戦略で富士通が最も意識しているのはIBM。「サーバ全体で一番強いのはIBM。IBMだけがシェアを伸ばして他社は落としている。富士通は何とか踏みとどまっているがIBMを意識して戦っていかないといけない」(山中氏)。打倒IBMを目指して富士通が6月末に投入するのがItanium 2プロセッサ搭載の「PRIMEQUEST」。また、サンと共同開発している「Advanced Product Line」(APL、コード名)も2006年中頃に投入する予定だ。APLはデュアルコア、マルチスレッディングで動作する2.4GHzのSPARC64 VIプロセッサを搭載する。「SPARC64 Vと比較してシングルコアレベルで20%のパフォーマンス向上を実現する」(サーバシステム事業本部 エンタープライズサーバ事業部 計画部 部長 瀬古茂氏)。

(@IT 垣内郁栄)

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富士通の発表資料

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