「ITサービス企業に脅威」、中国オフショア“運用”が伸びる

2005/6/15

 「中国でのオフショア開発は、次の段階で運用の外部化につながる流れがある。日本のITサービス企業にとっては脅威だ」。野村総合研究所(NRI)の情報・通信コンサルティング二部 上級コンサルタント 中村博之氏は6月14日、こう述べて中国でのオフショア開発を解説した。中村氏は「ITサービスがおかれている環境は、急激な円高に見舞われた1985年当時の製造業に近い」と説明、「製造業は5年間で体質を転換し、海外シフトを本格化した」と述べ、ITサービス企業の体質変換が必要との考えを強調した。

野村総合研究所の情報・通信コンサルティング二部 上級コンサルタント 中村博之氏

 NRIによると、日本のITサービスの市場規模は2004年で15兆円弱。一方、中国は10分の1の1兆5000億円弱となっている。しかし、中国ITサービスの2004年から2008年までの年平均成長率は27%で、日本の6%を大きく上回る。中国でITサービスの高い成長が期待できるのは、中小規模の企業でITシステムの内製が多いからだ。中国のITサービスの市場構成を見ると、ハードウェアやソフトウェアへの投資が過半を占め、サービスへの投資は6%にとどまる。中村氏は内製中心の中小規模企業が今後、企業の成長や競争の激化で「内製では立ち行かなくなり、ITサービスの利用が増える」とみている。

 中国の人件費は日本と比較して依然として安いようだ。上級SE、プロジェクトマネージャなどの日本での月単価は200万円。中国では80万円だ。一般のSEでも日本の140万円に比べて、中国は40万円で、約3倍の開きがある。中村氏は「ブリッジSEなどを用意するコストを考えても、中国でのオフショア開発には意味がある」と述べた。

 中村氏の考えではこの人件費の差を利用し、中国でのオフショア開発は運用のアウトソーシングに進む。現状のオフショア開発は、システム・インテグレータが開発を中国で行うのが一般的。しかし、今後は「開発を行った中国で運用も行う流れが出てくる」。NRIによると2004年の中国オフショア開発/運用の市場規模は1580億円。2008年には6940億円まで成長すると予測している。2004年のオフショア開発/運用の市場規模のうち、運用が占める割り合いは約7%に過ぎないが、2008年には約33%まで増えるとしている。2008年までにオフショア運用の年平均成長率は114.8%だ。

 国内で活動するITサービス企業は、開発に続いて運用でも仕事を奪われることが考えられる。中村氏は「最悪な場合は、運用の単価だけが中国の価格に近づくことも考えられる」と指摘し、コストダウン圧力を避けるために新たな戦略が必要と説明した。

(@IT 垣内郁栄)

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野村総合研究所

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