現場に判断力を提供、SAP Analyticsのパラダイムシフト

2005/6/22

 SAPジャパンは6月21日、業務状況をリアルタイムに反映し、現場スタッフの判断を支援する分析ツール「SAP Analytics」を発表した。経営層、経営企画などを対象とした従来のビジネス・インテリジェンスツールと異なり、「複眼的に判断する能力が求められる現場に判断力を提供する」(SAPジャパン バイスプレジデント ソリューション統括本部 統括本部長 玉木一郎氏)のが特徴。2005年10月から年末にかけて出荷する。

SAPジャパン バイスプレジデント ソリューション統括本部 統括本部長 玉木一郎氏

 SAP Analyticsは、SAPのポータル製品「SAP Enterprise Portal」(EP)と連携する。玉木氏は「分析のパラダイムシフトを起こす。3年以内にSAPのすべての企業ユーザーが利用するようになる」と普及に自信を見せている。

 SAPは分析ツールとしてデータウェアハウス(DWH)の「SAP BW」と、KPIに基づく業務のモニタリング、評価ツールとして「SAP Strategic Enterprise Management」(SEM)を持つ。玉木氏よれば、BWは「過去の経営に対する評価」であり、SEMは「企業全体の目標とそれぞれの部署の成績、トップの意思を現場に伝える仕組み」。この2つが従来どおり必要であるのは変わらないが、業務の現場では「求められる業務の処理スピードが速くなり、例外処理への迅速な判断が必要となっている」。

 この現場の判断を支援し、リアルタイムの情報を提供するのがSAP Analyticsという位置付けだ。具体的には、ERPで受注確認した場合、SAP Analyticsを使って企業の与信と売掛金を確認。追加の注文を受け付けるかを判断する、などの使い方がある。

(画像上)SAP Analyticsの利用画面。グラフや表で業務データを表示
(画像下)SAP NetWeaver Visual Composer。ドラッグで分析アプリケーションを作成できる(それぞれクリックで拡大します)

 現場の担当者が利用するツールなので、「時間をかけて分析をしろというのはありえない話。そんな暇はない」(玉木氏)。SAP Analyticsで重視されているのは、分かりやすく、手軽に経営のいまの状況を担当者に伝える機能だ。SAP AnalyticsのデータソースはSAPアプリケーションやBWはもちろん、Webサービスで接続する他社の業務アプリケーション、BIも含まれる。SAP Analyticsは、SAPのSOA基盤「SAP NetWeaver」上に構築されるため、他社のアプリケーションとの連携が容易だという。

 SAP AnalyticsのインターフェイスはEPと統合され、Webベースで利用できる。分析の結果はEPの「iView」上に数値やグラフ、表となって表示される。また、SAP Analyticsで利用するアプリケーションを現場の担当者が作成できるツール「SAP NetWeaver Visual Composer」を用意。ドラッグ&ドロップで必要なサービスを設定するだけで、分析アプリケーションを作成、ポータルに展開できる。SAPは「販売・与信分析ダッシュボード」「在庫分析ダッシュボード」など、Visual Composerで利用できる業種、業務別のひな形も28業種100種類を用意する。

 経営状況を現場に提供するツールとしてはレポーティングツールや帳票ツールもあるが、玉木氏は「複数の情報ソースからいまの情報を持ってこれるのはSAP Analyticsしかできない」と指摘。「ニーズに合わせて必要な情報を能動的に持ってきて、ERPなどトランザクション系のデータと一緒にポータルに表示できる」と差別化のポイントを説明した。

(@IT 垣内郁栄)

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SAPジャパンの発表資料

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