“拡大と柔軟”、MSの知財戦略、対オープンソース戦略を見る

2005/9/9

 米マイクロソフトの知的財産担当 コーポレート バイスプレジデント 兼 副ゼネラルカウンセル マーシャル・フェルプス(Marshall Phelps)氏は9月8日会見し、マイクロソフトが保有する特許のクロスライセンス契約やライセンス供与で、日本の大手ITベンダ3〜4社と交渉していることを明らかにした。フェルプス氏は「これから2年くらいで世界の主要IT企業30〜40社とクロスライセンス、ライセンス供与で契約したい」と述べ、マイクロソフトの知的財産ビジネスを拡大する姿勢を強調した。

米マイクロソフトの知的財産担当 コーポレート バイスプレジデント 兼 副ゼネラルカウンセル マーシャル・フェルプス氏

 フェルプス氏はマイクロソフトの知的財産ビジネスについて、「お互いが信頼関係を結ぶことが最終目的」と説明し、「収益目的ではない」と述べた。マイクロソフトは2003年12月に知的財産権の管理に関する方針を変更し、「オープンで公正に特許権を他社にライセンス提供する方法を採っている」(フェルプス氏)。

 マイクロソフトがこれまでクロスライセンス契約やライセンス供与プログラムで提供してきた特許権は100件以上に上るという。「競合製品への活用も許容するような積極的な姿勢」の下で、ライセンス供与によって、売り上げを伸ばし、研究開発費用を増大、その成果をさらにライセンス供与するという「知的財産とイノベーションのサイクル」を維持、強化することを狙う。「IT業界は本当にいろいろな発明があり、企業がお互いの特許ライセンスを供与し合う関係が50年続いている。われわれもその関係に参加しようとした」(フェルプス氏)

 知的財産ビジネスを拡大するマイクロソフトにとってオープンソースソフトウェアは厄介な存在だ。マイクロソフトはこれまでGPLの存在などを理由にOSSを批判することが多かった。しかし、フェルプス氏の説明からはマイクロソフトの姿勢の変化が伺えた。キーワードは相互運用性だ。フェルプス氏は「顧客から見るとLinuxだろうが、Windowsだろうが関係ない。そこに相互運用性が確立されていれば、顧客としては問題がないと思う」と語った。

 顧客が求めるのはIT自体ではなく、ITが生み出すサービスや価値であるとの考えだ。実際、企業情報システムの多くはUNIXやWindows、Linuxなど異なるプラットフォームが混在していることが一般的。OSSの推進で存在感を持つIBMで28年間を過ごし、2003年6月にマイクロソフトに入社したフェルプス氏は、異種混在の環境を単一プラットフォームに統一することには消極的なようだ。「顧客が求める異種混合を拒否できる企業はない。(マイクロソフトの相互運用性の確立は)民間企業として商業的に成り立つために必要な決定だ」(フェルプス氏)。相互運用性についてはマイクロソフト日本法人の担当者も言及していて、マイクロソフトの共通メッセージになっているようだ(参考記事)。

 フェルプス氏はWindowsの相互運用性を高めることで、OSSコミュニティとの関係が良好になるとも考えている。「マイクロソフトはコミュニティから見ると、相互運用性の観点では友好的に思われている」(フェルプス氏)。フェルプス氏は「まだいえないが、いろいろなことが動いている」と述べ、コミュニティとの関係強化のためにマイクロソフトが新しい施策を用意することを示唆した。さらに、「OSSはなくならないし、なくなる必要もない。これは事実上、必要なものだ。マイクロソフトは異種混合の世界で競争していくことになる」と、柔軟な姿勢を強調した。

(@IT 垣内郁栄)

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