大人になったマイクロソフト、その知的財産戦略は

2004/5/22

 米マイクロソフトの知的財産担当 コーポレート バイスプレジデント兼副ゼネラルカウンセルのマーシャル・フェルプス(Marshall Phelps)氏は5月21日、マイクロソフトの知的財産(以下、IP)について、「これから毎年、米国で3000件の特許申請を行う」と述べ、3〜4年をかけてIPを他社にライセンスし収益を挙げるビジネスモデルへの転回を図る考えを示した。パートナー企業とお互いのIPを相互利用するクロスライセンス契約も積極的に進める考え。フェルプス氏は「クロスライセンス契約を話し合うために来日した」と述べ、日本のITベンダとも積極的に契約する姿勢を強調した。

米マイクロソフトの知的財産担当 コーポレート バイスプレジデント兼副ゼネラルカウンセルのマーシャル・フェルプス氏

 マイクロソフトはすでに米国でソフトウェアに関する3500件の特許を取得、7000件を申請中だという。2003年12月にはフォント技術の「ClearType」、ファイルシステムの「FAT」を他社にライセンスすると発表。さらにXMLスキーマもライセンスすると発表している。フェルプス氏は「広範囲なIPをライセンスするのがわれわれの哲学」と述べ、今後2カ月で4〜5のソフトやソースコードをライセンス契約の下で他社に公開していく考えを示した。

 マイクロソフトのライセンス契約については、2004年2月26日に公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いがあるとしてマイクロソフト日本法人を立ち入り検査した。公取委が問題視したのは、Windows XPに含まれていた「Non-Assertion of Patents」(特許権非主張条項:NAP)。Windows XPの機能がOEM先の企業が持っている技術と似ていても、OEM先がマイクロソフトを訴えることができないという内容だ。ただ、フェリプス氏の説明によると、マイクロソフトはクロスライセンス契約を積極的に進めるという考えから、公取委の検査前にNAPを契約から削除することを決定していた。そのためフェリプス氏は公取委の検査を「皮肉なタイミングだった」と述べ、「公取委にはきちんと話をし、誠意を持って対応した。NAPは正当で法的だった」と説明した。

 マイクロソフトは先日、同社初のオープンソースソフトを公開した。プロプライエタリソフトの有効性を強く訴えてきたマイクロソフトが、オープンソースソフトを公開したことは驚きをもって受け止められたが、フェリプス氏は「マイクロソフトとオープンソースコミュニティは意味のある形で協力していく。マイクロソフトはコミュニティがなくなるとは思っていない」と述べ、柔軟な姿勢を示した。フェリプス氏は「オープンソースソフトと(プロプライエタリソフトと)は機能性やセキュリティ、TCO、使いやすさで競争していく。最終的に市場が決めることだ」と述べた。

 マイクロソフトは従来の唯我独尊ともとれるかたくなな姿勢から、パートナー重視の柔軟姿勢に変化を遂げようとしている。その変化が端的に表れているのがフェリプス氏が主導するIP戦略だ。フェリプス氏は「私が主張することにビル・ゲイツ会長が賛同しなければ、私が2003年6月にマイクロソフトに入社することはなかっただろう」と述べ、同社が全社的に方向転換を進めていることを印象付けた。「多くの意味でマイクロソフトは成長し成熟した。企業としての役割を果たそうとしている」という。

(編集局 垣内郁栄)

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